04
コタツに入る名無しとマルコは終始無言。
名無しは別に気にした様子はないが、マルコは何やら居心地が悪そうだ。
買ってきた酒をごそごそと取り出すと、勝手に飲み始めた。
冷たい男だ。
「…飲むかよい」
「あ、頂きますます」
一人で飲むのが気まずいのかマルコが名無しに酒を進める。
「お前、飲めないんじゃなかったのかよ」
確か以前一緒に飲むか聞いたら飲めないと名無しは言っていた。
なのにマルコと乾杯して缶ビールをぐびぐび飲む名無しの姿。
「サッチの大事な食費を削ってご飯が出てこなくなったら大変だからね、実は飲めるって言う…」
ふふふ、と笑う名無しは何とも不気味だ。
どんだけ安月給だと思われているのかはわからないが、酒ぐらい買ったところで別に家計に負担は掛からない。
「そうかよ」
変な所で気を使う奴だ。
「…名無しはなんでまたサッチのとこにいるんだよい」
マルコが勝手にテレビを付けながら、名無しを見る。
「寄生先が無くなったところを拾って貰いまして」
「寄生…先?」
マルコの不思議そうな声に、サッチは味噌を溶きながら笑いそうになった。
割かしまともに生きてきたマルコにはニートと言う生き物がよく理解できないらしい。
「働いて…ねぇのかよい」
「今はサッチの家の警備員してます」
「…ああ、よい」
狼狽えているマルコの声にサッチは思わず肩を揺らす。
なんともヘンテコな会話だ。
「マルコはサッチの友ですか」
「そうだねい、お前とも高校のころ何度か話しただろい」
「…うん、ああ、うん」
自分で振っといて面倒になったらしい。
名無しの返事がなんとも適当になっている。
「そいつ脳みそ動かねぇから質問しても無駄だぞ」
出来上がった鍋を持って二人のところに運ぶと、キョロキョロと鍋敷きを探す。
「おい名無し、雑誌…」
「…」
コタツで丸くなる名無しがサッチを見る。
「あー…マルコ、悪ィけどそこら辺の雑誌机に敷いて」
マルコは週刊誌らしき物をばさりと机に置いた。