06




触れる唇は、いつものように軽くはなく離れることはない。
唇で包むように何度も何度も啄まれて、舌先が唇に触れる。


口腔の粘膜を舌先が撫でる度に、煙草の味とアルコールが混ざって喉の奥に流れ込む。
歯裏を確かめるようにゆっくりと撫でて、唾液を絡めとるように舌が絡んできて擽ったさに名無しは目を閉じた。



「…目、開けろよ」



少しだけ唇を離したサッチがぼそりと呟く。
空気が震えるのを感じて、うっすらと目を開けると褒めるようにこめかみに唇が落ちてきた。
目の縁をとるように目元に舌が当たって、眼球と瞼の隙間に入り込む。



「…っん」


瞼の内側に侵入してくる柔らかい舌先が涙を拭う。





「…覚えてませんじゃ困るから、ちゃんと見とけ」


「な、にが」



こんなことされて覚えてませんなんて言えるほど冷静ではない。
むしろ酔いが醒めたら絶対に殴ってやる。



脇腹から入り込んでくる指先に表情を固くした名無しは唇を噛み締めた。



「…っは、」



優しく触れるだけの手のひらは這うようにして名無しの身体を少しずつ蝕む。
肋骨を撫でて、背中の方に移動する手は下着の下へと入り込んだ。


その瞬間に絞められていた胸元が解放されて、肩から紐がずれ落ちる。
背骨を辿っていく指先と同様に腕に引っかかったシャツがずるずると上に捲り上がり肌が露出したのが分かった。


熱くなった身体のせいか、外気に晒された肌が粟立つ。
服の中で背中から指を這わせて肩を撫でていたサッチの手が好き勝手に動き回りながらシャツをたくしあげる。


隆起を掌で覆って、感触を楽しむように指先を肌にくい込ませるサッチに短く息を漏らすと、息を吸われるように唇が重なった。



「っ…ん」



再び入り込んでくる舌が、先程よりも敏感になった粘膜をこそぐように舐めて、名無しの舌の根元を擽る。
与えられる快感に喜悦を感じる身体がゾクリと震えて、固くなった突起がサッチの掌を押し上げた。


痛いほどに尖る突起に気が付いたサッチが親指の腹で付け根を撫でて、つまみ上げる。

「ふ、…っあ」



摘ままれる度にきゅぅっと子宮が収縮するような痛みに苛まれて、名無しは足を擦り合わせた。
シーツの上を滑る足は滑らかな音を立てて、サッチの視線を呼ぶ。



ゆっくりと口を離して、チラリと足元を一瞥したサッチは小さく笑ってそのまま隆起を辿るように唇を這わせる。
ちゅっ、と幼稚な音を立てながら突起に触れた唇に名無しはびくりと身体をすくませた。


生ぬるい舌先が嬲るように突起に絡んで、押し潰すように何度も尖端を突つく。
濡れた感触と、舌先から逃れるように滑る突起がもどかしくて胸をせせり出すように背骨がしなる。



「‥エロ」


ぽつりと感心するように呟いたサッチの吐息にすら背筋が震えた。
恥ずかしいと言うよりは籠った熱がもどかしい。


ジンジンと痺れるような尖端はより強い刺激を求めるように震えて、下半身が酷くダルく感じた。

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