04
悪酔いしているのか、興味本意なのかよくわからないが質問には答える気にはならない。
「エースとかお前のこと好きなんじゃねぇの?」
「は?なんで?エースが興味あんのは弟ぐらいなもんでしょ」
「だって昼間、キス誘われてただろ」
「あれはネタでしょ、サッチともネタでやってるから」
「は?」
「え?」
少し顔を引き釣らせて笑うサッチに名無しが眉間にシワを寄せる。
「は?…え?まさかお前ネタで俺とキスしてんの?」
「え?」
サッチの言葉に名無しの思考回路がバチバチと火花を散らす。
その言い方だとまさかネタなの?と言わんばかりだ。
「いやいや逆にネタ以外で何があんの?最初からネタだったじゃん」
確か最初の時は敵襲後の宴の席でだった。
周りに囃し立てられて、酔った勢いとその場のノリだけでキスをしたら物凄いウケて、それからは何となくからかわれたらキスをするのが二人のお決まりになっていた。
「まぁまぁネタってのは同意するけど、全く気持ちがなくてキスしてんの?」
「…え、いや仲間としては一番サッチが好きだよ。だからサッチとなら別に嫌悪感はないかなってレベル」
「へー‥そうかよ、全然嬉しくねぇな、それ」
呆れたようにため息を吐きながら酒を煽るサッチに、名無しは少し目を細めてサッチから目を反らした。
「やっぱ、私部屋に戻る」
「あ?何で。飲みなおしに付き合う約束だろ?」
「…気が変わった」
軽く睨んでくるサッチから目を反らすと、目の前に5合瓶が置かれた。
開けたばかりのその酒瓶には並々と酒が入っていて、瓶の中で揺れる。
「じゃ…飲むよな?」
サッチと名無しの間ではルールがある。
先に部屋に戻ると口にした方が相手の飲みかけの酒を全て飲み干す、と言う海賊らしいルールだ。
いつもは朝が早いサッチの方が先に寝るので名無しの飲みかけの酒を飲んでから寝るのだが、サッチからしてみれば名無しの飲む酒は水みたいなもので大したことはない。
だが逆は違う。
名無しはサッチが飲む酒は飲めない。
飲めなくはないだろうが、多分倒れる。
「飲みなおしに付き合うか、コレ飲んで部屋に帰るか。どっちでもいいけど?」
よりによって開けたばかりだ。
残り少しぐらいならまだしも、これは飲めない。
が、現状で部屋に帰るためには目の前にある酒を飲まないと帰れないわけで。
ルールを破るのは海賊としての名折れだ。
「飲めばいいんでしょ」
目の前にある酒瓶を掴んだ名無しはぐっと息を飲んで一気に酒を流し込む。
イッキ飲みは慣れたもので、喉を開けるだけなので出来ないこともない。
ただ焼けるような熱さが喉を刺激して、熱さが胃へと流れ込んでいく。
三分の一ぐらい飲んだところで、目の裏がチカチカしだして口を瓶から離す。
「…うぇ、不味‥」
クラクラとする頭を押さえた名無しはサッチが差し出したミネラルウォーターをゆっくりと喉に流し込んで深呼吸を繰り返す。
ジンジンと熱い喉と、鼻に抜けるアルコール臭が吐き気を誘う。