02







名無しは高校の後輩だ。
いつも屋上に寝ていて、マルコとサボって屋上にいくと、必ず寝ていた。
短パンを履いているとは言え、股を割いたように足を広げて寝る姿は思春期の男すらも萎えさせる威力で。
たまに話す程度で、そんなに仲良くはなかった。




たまたま歩くのが面倒になったと公園のベンチで横になっていた名無しと再会したのが半年前。
寝る姿を見たら一発でわかった。

声を掛けたら名無しはすっかり忘れていたらしいが、行くところがないと言ったので拾ってきた。





もともとものぐさだったが最近は更に拍車が掛かっている気がしてならない。




「この間のプリンの方が美味しかった」


「そうかよ」



シュークリームをぺろりと平らげた名無しはそのままベッドに丸くなる。
食べたら寝て、食べたら寝ての繰り返しで何が楽しいのかわからない女だ。




「晩飯なにがいい?」



煙草の灰を灰皿に落としながら名無しを見ると、既に半目。
身体は既に睡眠モードらしい。



「あー…アレが良いな…うん、まぁ…なんでもいい」


「少しぐらい頭を使え」


「眠たくなってきた」


「お気楽なヤツだな」



スーツの上着を脱いで、ハンガーに掛けるとYシャツの袖を捲って冷蔵庫を開ける。
朝用意したご飯は手付かずで冷蔵庫に入っていた。



「…お前、飯ぐらい食え」


「お腹すかないし、冷蔵庫に行くまでの消費カロリーが勿体無い」



名無しは一日一食、晩御飯のみ。
しかも食べないで寝ることも多々ある。
サッチが飲みに行ったら何も食べてなかったので最近は家で食べることが増えた。




「あ、名無し…お前の携帯繋がんなかったぞ」


「携帯?ああ…どこにあるかわからん」


サッチの持たせた携帯すら持つのが面倒らしい。
多分放置しすぎて電池切れにでもなって、どっかに転がっているんだろう。
名無しのことだから多分ベッドの下辺りに。



「携帯の意味がねぇだろ」
「そんなこと言われてもあんな小さな物、すぐなくなる」


「首から下げとけ」


「首が痛くなる」



本当に箸以外は持たない女だ。
いやむしろ箸も持たない気がしてきた。



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