紡ぐ四季
名無しと出会って2年。
付き合って1年。
人混みが苦手だった名無しもなんとかそこそこ慣れて、今日も二人で公園に。
爽やかに降り注ぐ日差しと、ほんの少し暖かい風。
緑樹の下で太陽を眺めると、風に揺れる沢山葉っぱがチラチラと太陽を反射させる。
乾いたシャッターの音が連続で聞こえて、隣に寝転がる名無しを見ると愛用の一眼レフカメラ越しに見つめていた。
その顔はどことなくご満悦そうで、サッチは頭の下に腕を潜らせて枕がわりにしながら目を閉じる。
平日とは言え、小さな子供や休憩中のサラリーマン。
そこそこ人の居る公園は名無しにとって、リハビリにもなるいいスポットらしい。
「サッチ」
枕にしていた腕を名無しが引っ張る。
「ん?ああ…」
左腕だけ頭の下から抜き出して、大きく手を広げるとそれに名無しが指を絡めた。
最初頃は公園ですら手が震えていたが、今はもう震えない。
大丈夫か?と聞いたら「サッチがいるから大丈夫」となんとも健気なことを無表情で言うもんだから、抱き締めていいものか迷った。
ちなみに迷った末の末に止めた。
「サッチ」
「んあ?」
閉じていた目を左だけ開けて名無しを見ると、木陰から漏れた太陽の光が眩しくて目を細める。
「綺麗だね」
「そうだな」
相変わらず空を見上げている名無しは無表情だが、現状には満足しているようだ。
まだまだ名無しの微妙な表情が読みきれないサッチに名無しは度々補足するように言葉を紡ぐ。
そうされる度に、罪悪感と言うか、今まで表情ばかりに囚われていた自分に気がつかされて、反省する。
「今日この後どうしたい?」
「もっと人が居るところに行きたい」
「リハビリで?」
「サッチとしか行けないから、もっともっと行きたい」
「そうかよ」
名無しはいまいち言葉が足りない。
でも足りないからこそ直球で心に響く。
言葉に裏はなく、下心なんてなく、ただ素直に思ったことを口にする名無しは、きっと純粋過ぎるぐらい純粋でたまに息すら出来なくさせる。
名無しには他意などないのだろうが、直球で求められる自分が嬉しすぎて。
「サッチ、」
どうしてこうも名無しは
「大好きだよ」
人の心を読み取るのが上手いのか。
「ああ、俺も名無しが好きすぎて困る。マジで」
こんなにも笑える日が来るなんて思いもしなかった。
ただ名無しが好きで好きで、どうしようもないぐらい好きで。
握った手の隙間に大好きがたくさん詰まった第三水曜日。