02




ご満悦そうに食べ終わった名無しの頭をサッチが撫でる。
その顔は庇護欲がから来るのもなのか、物凄い優しい顔をしている。



「パスタでいいだろ?」



自分の家のようにキッチンに向かうサッチにマルコは適当に頷く。
マルコは自炊なんてしないから、食事が勝手に出てくると言うだけでも助かる。




「サッチ、ビール」


「自分で取れよ」


「…名無しも飲むだろい」

「んー」



名無しがどうでもいいように返事をするが、それを聞いたサッチは黙ってビールを冷蔵庫から持ってきた。

テーブルに一本、そしてソファにいる名無しにサッチがビールを手渡す。




「先になんか食うか?」


「どっちでもいい」


「つまみくれよい」


「お前には聞いてねぇよ、だいたいお前は悪酔いなんかしねぇだろ」


「名無しも食うよな?」


「あー…うん」


「名無しの適当なとこを利用すんじゃねぇよ」



小さく舌打ちしたサッチはへいへいとだけ返事をして、キッチンに戻っていく。



「…マルコはサッチと仲良しだね」


「まぁねい、中学からの腐れ縁だよい」



ノートパソコンをビール片手に立ち上げて、チラリと名無しを見る。
珍しく話し掛けてきたと思ったが、やっぱりいつも同様たいして興味は無さそうだ。



「お前、いままでずっと養われてきたのかよい」


「…と、言いますと?」


「だから‥働いたことはねぇのかよい」


「ああ…ない」


小さく首を振った名無しはぐびぐびとビールをイッキ飲みして、そのままソファにころんと横になった。

もう座っていることすら疲れたらしい。



「名無し、もうちょっとで出来るから待っとけよ」


「んー…」



サッチの声に名無しは小さく返事はするものの、目はもう半分閉まりかかっている。

うつらうつらと夢の中と現実をうろうろする名無しは、多分一番幸せな顔をしていると思う。
ビールを飲みながらチラリと名無しを見ると、膝掛けに顔を埋めて身体を丸めていた。



「寝るなよー!」


「うー…」


度々するサッチの声に必死で返事をする名無しに、自然と肩が揺れる。



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