7日目






ローと会って一週間経った。
ログが貯まった以上こんな辺鄙な島に留まる理由もない。


「……」


お気に入りの木の下には、ローの姿はない。
いつもと同じように横になって、そよぐ葉の隙間から空を見上げる。

あれだけ荒れていた空が嘘のように晴れ渡り、いつものような優しいがふわふわと頬を擽った。


いつもと同じ日常の筈なのに、心に隙間が空いてしまったような気がする。


「私も大概素直じゃないなぁ」

ゆっくりと目を閉じて、ため息と一緒に呟くと、返事をするようにサワサワと木が大きく揺れた。



父親のことにしても、ローのことにしても。
行かないでと言えないなら一緒に連れていってと言えばいいことぐらいわかっている。
ダメ元でもいいから言っていれば、こんな風にため息なんて吐かずに済んだのかもしれない。


昨日の晩も、ベッドでゴロゴロと寝返りをうちながらああでもないこうでもないと呟いてみたが、ローにかける言葉なんて一つも出てこなかった。
よくよく考えれば、海賊を見送るなんていうのも変な話だ。

色々と考えたが、結局早起きはしたものの見送りにはいかなかった。


「それが命の恩人にたいしての態度か?俺がいなかったら今頃お前は水死体だ」


ゴロゴロと芝生の上で転がっていた名無しに、聞きたかった声が降ってきて、確かめるように目を開ける。
視界の上の方に見えたのは確かにローの姿だった。


「ロー。ローだ。てっきりもう行ったのかと思ってた」

「お前を迎えに来てやったんだ」


大きな刀でトントンと肩を叩きながら目を反らしたローは、長い足を小刻みに揺らす。


「なんでもお見通しなの?」

「いいから早くしろ。もう行くぞ」


いつまで経っても立ち上がらない名無しに苛立ったのか、ローから舌打ちが漏れた。
本気でローが怒る前に、重い身体を起こして、草を払う。


「やっぱり雑用からかな?」


先に歩き始めていたローを少し小走りで追いかけると、後ろからローの顔を覗き込む。


「当たり前だ」

「頑張るから置いていかないでね、キャプテン」

「さあな」


振り返って口角を少し上げたローの顔は、海賊らしくて父親の面影を見た気がした。







ハートと過ごす一週間



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