6日目





嵐が去った後の海には、へんてこなものがたくさん流れ着いている。
なにに使うのかよくわからない機械や道具。嵐に巻き込まれて壊れてしまった船の一部。布や樽、網や玩具。

海岸はそんな訳のわからないもので埋め尽くされてしまう。


「父親を待ってるのか」

「ううん、もう待ってない」


足元に埋まっていた本を引っ張り出すと、この間までローが読んでいたものだったことに気がつく。
海に入ってきたときに落としたのだろう。埋まっていたため流されなかったらしい。


「死んだことにしてほしいんだよね、きっと」

「逃げたのか」

「違う違う。元いた場所に戻ったの」


ボロボロになってしまった本はどう見ても手遅れで、拾い上げた本をもとあった場所に戻した。


「海賊だったのか」


ローは察しがいいらしく、暈したような言葉を簡単に汲み取る。


「多分ね」


本人から直接聞いたことはないが、それらしきマークが肩に彫ってあったし、あとはもうなんとなくだ。

これはあくまでも憶測でしかないが、海賊であることを諦めきれなかった父親は、わざと嵐の中を出ていったのだと思う。

意地でも海賊であることを明かさなかったのは、島での風当たりが悪くならないように父親なりに気を使っていた結果だと思っている。


死んだことにして海賊に戻れば周りに気が付かれることもない。
寡黙なタイプだったので実際のところはわからないが、希望も含めてそう思っている。


「それならなんでここに来るんだ?待ってないんだろ」

「それは、ほら。人間そう簡単に割りきれるもんじゃないでしょ?」


自分を納得させようと色々と理由を考えてはいるが、何となく諦めきれない部分もある。
今まで育ててくれたのだから、好きなように生きて欲しいと願いながら、どこかでやはり帰ってきてくれるかもしれないと一抹の期待がある。


「ローが来てくれなかったら待ち続けて風邪引いてたかも」


ぽつりとこぼれた言葉に、ローはあからさまに顔をしかめた。
風邪で済むか、と言いたいのだろうと表情から読み取れたが、敢えて気がつかなかったフリをする。


「ありがとうね、ロー」


名無しの言葉にローはなにも言わなかった。



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