04
その後案の定息切れしたサッチから直ぐに電話が入って、迎えに行くと一方的に言われて切られた。
名無しには連絡するなと言われたし、サッチは迎えに行くと言われたきり電話は通じないし。
どうするか、と頭を悩ますマルコはお湯を沸かしながら小さく唸った。
厄介なことに巻き込まれた気がする。
「名無し」
「…‥」
返事をするのが面倒なのか、名無しは重そうに頭を上げる。
実際脳みそなんてたいして入っていないであろう頭は軽そうだが。
「サッチのヤツが迎えに来るとよ」
「あららー…」
特に問題は無さそうに呟いた名無しはやはり面倒そうにまた顔を埋めた。
悩んでいる感じは皆無。
うとうととしていた名無しは数分後、初めての家だと言うのに驚きの神経の太さで寝息を立て始めた。
やっぱり理解できない。
お湯が沸いたと知らせるヤカンに呼ばれて台所に向かうと、インターホンが鳴る。
このタイミングで来るのはサッチだろうと、軽く確認してからロックを解除した。
探し回っていただろうサッチはいつになく焦った顔で上ってくる。
ゼーゼーと肩で息をするサッチは、真冬だと言うのに額に汗が光っていた。
「名無しは?」
「ソファで寝てるよい」
マフラーを外しながら勝手に上がってくるサッチに指を指して教えると、我が物顔でリビングへと向かう。
昔ながらの関係なので気にもしない。
マルコもサッチの家には勝手に上がるし、お互い様だ。
「名無し、お前何してんだよー…探したんだぞ」
ソファで寝る名無しを見てサッチがハァ、と肩を揺らしてため息を吐く。
名無し本人は完全に寝ているため、反応もない。
沸かしたばかりのお湯でサッチの分まで珈琲を煎れると、ソファの前に座り込むサッチに手渡す。
「サンキュ」
「ケンカでもしたのかよい」
名無しに聞いても答えないのでもう一人の張本人に聞くと、バツが悪そうに頭を掻きながら珈琲を啜り、同じく言葉を濁す。