「なんだい、最近随分エースと仲がいいじゃねぇかい」
「そう?別にそんなつもりはないけど」
横に番犬のようにくっついてくるエースはマルコが言うように相談してからいつも側にいる。
エースは名無しがサッチを苦手にしていると思っているらしく、なにかとサッチから遠ざけようとしてくれているらしい。
感情をもて余した名無しとしては助かるが、気のせいか蟲達のご機嫌が斜めになってきているように感じる。
蟲は元々エースの事が苦手だ。
それは海楼石をしていても払拭しきれないらしく、落ち着かないらしい。
そんなこと善意で側にいてくれるエースにはとてもじゃないが口にはできそうにない。
「名無し、ちゃんと食ってるか?」
「え?ああ、うん」
「どっちが上かわかんねぇな」
弟に心配されるなんて、とマルコが少し馬鹿にするように笑って兄らしい表情を浮かべていて、何となく胸がほっこりした。
つい最近まではこんな状況あり得もしないと思っていたのに、なんだかとても幸せだ。
そう思いながら夕飯を口に運ぶと、エースとの僅かに空いてた隙間に割り込むようにトレーががしゃんと乱暴に置かれた。
「お疲れー、マジ疲れたー」
そこに割り込んできたのはこんな流れになった元凶のサッチ。
さも当然のように割り込んできたサッチのせいでぎゅうぎゅうと名無しとエースは押しやられる。
「なにすんだよ、サッチ!他にも空いてんだから他のとこすわれよ!」
「悪い悪い。ここしか空いてねぇように見えたわ」
「白々しいよい」
少し間を空けようと横に避けた名無しの腰をサッチがエースの方を向いたまま引き寄せる。
その腕には蟲が数匹止まっていて、なんとも言いがたい感情に苛まれた。
「サッチ、…離し」
「なに?どうかした?」
腰に回された手があまりにも自然すぎて、離してと言う名無しの方が悪い気すらしてくる。
「あ‥いや、なんでも、ない」
やけに密着する身体をちらりと目だけで確認する。
それからマルコに目で訴えると、それに気が付いたマルコが眉間にシワを寄せてテーブルを指でコツコツとノックした。
「名無しから手ぇ離せよい、サッチ」
「んー?なにが?」
へらっと屈託なく笑うサッチの背中をエースが覗き込んで、名無しの方に伸びる腕をバシッと痛々しい音を立てて叩いた。
「いってぇなー!なにすんだよエース!」
「止めろよ!名無しが可哀想だろ!!名無しはサッチのこと苦手なんだからなっ!」
ふんっ、と鼻から息を吐き出して腰に手を当てていきり立つエースに食堂の空気が固まった。
サッチは少し赤くなった腕を擦りながら顔を歪めて、不思議そうに首をかしげる。
「名無しが俺を苦手?そんなわけねぇだろ?名無しは俺が好きなの」
「「は?」」
エースの情けない声と、名無しの困惑の声が見事にシンクロして、マルコが短いため息をもらした。
衝撃の告白
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