「……あの、これは‥嫌がらせですか?」
いつものように朝食を食べ終わったら、サッチがデザートをくれた。
甘いものは大好きだし、デザート自体はとても美味しそうだ。
「んあー‥なんつーの?好きなもんがわかんなかったからとりあえず時間の限り作ってたらこうなったんだけど」
サッチが名無しの前に並べたデザートは十数種類。
ワノ国ではポピュラーな白玉や饅頭、ティラミスやチーズケーキ、生クリームのたっぷり乗ったチョコレートケーキ。マカロンやらカップケーキやら。苺のタルトやら。
見ているだけで目がチカチカしてしまうぐらい色とりどりだ。
「…こんなに食べれないです」
「あ、食べる気はあるんだな」
「も、勿体ないからですよ!どうせ捨てるとか言うんでしょう!?」
へらっと笑ったサッチに慌てて名無しが口を開くと、はいはいと軽くあしらわれてなんとも微妙な気持ちになった。
「好きなのだけ食えよ」
眉間にシワを寄せてデザートを睨み付けると、サッチが軽く肩を竦めてちょいちょいと指先で皿を名無しの方に突き出した。
そんなことを言われても、こんなに大量のデザートからどう選べって言うのかが理解できない。
少なくても完食することは無理だ。
ちらりとサッチを恨めしげに見ると、サッチはん?と軽く首を傾げて笑うだけで、妙に苛々する。
「あー!名無しだけずりぃぞ!たくさんデザートあるじゃねぇか!」
「うるせぇよエース、お前にはミカンの缶詰やっただろ!」
「なんで俺はミカンの缶詰で名無しはそんなに沢山デザートがあんだよ!しかもあの缶詰名無しのデザートのあまりだろ」
「は?知らねぇー、お兄ちゃんは弟よりも妹の方が可愛いもんなんだよ!文句があんなら来世は女で生まれて来るんだな!」
少し遠くから叫ぶエースは、火を苦手にしている名無しに気を使っているのだろうが、そのお陰で声は食堂に響いて名無しとサッチに視線が集まる。
余程悔しいのか、エースは地団太を踏んでいた。
「ふざけんなサッチ!親父に言いつけるからな!差別だぞ!!」
「差別じゃねぇよ。区別区別!」
まるで子供同士の喧嘩のように大声で叫ぶ二人にクルー達は呆れ顔。名無しだって呆れる他はない。
「どうせ食べきれなくて余るんだからエースにあげる、ちょっと待って」
流石に叫び続ける二人は迷惑でしかなく、目の前にあった苺タルトの皿だけ取って席を立ち上がる。
苺タルトが特別好きだったわけじゃないが、目の前にあって尚且つ艶やかな彩りだったのでついつい手に取った。
「お、苺好き?かわいーとこあんじゃん。やっぱ女の子だなー」
嬉しそうにサッチが笑うものだから、異常に頭にきてタルトを置いて饅頭を口に突っ込んだ。
「ご馳走さま」
弾力のある饅頭を懸命に咀嚼して、勝ち誇ったようにサッチを見下したが、たいして勝てたような気がしないのは多分サッチが笑っていたからだ。
君の笑顔が見たいので
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