ヤりたいローさん
ギッとベッドが軋む音が船長であるローの部屋に響く。
「寄るな」
「人のベッドの上でよくその台詞が言えたもんだな」
「なに?じゃあ私に床座れって言うの?このろくでなし甲斐なし鬼畜人外変態隈」
「そこまでか」
ガンガン吐き出される悪態に船長であるローは珍しく少し怯んだ。
そして口汚く罵るのは船員の一人である名無しだ。吐いて捨てるほどの情報と、知識を持ち合わせていたことからローに半ば無理矢理船に乗せられている。正確には潜水艦だが。
「だいたい私がアンタの部屋にいるのは他に部屋がないからでしょ。まだ客なのにこの扱いはなんなの」
「いずれ俺のものになる。なんら問題はない」
「その妄想癖なんとかしたら?」
地味に少しずつ寄ってくるローを足で制しながら眉を顰めた名無しは、読んでいた分厚い本を閉じた。
なにが気に入ったのかは知らないが、ローは身体の関係を求めているらしく、毎度毎度飽きずに押し倒そうとする。
「何故そこまで拒絶する」
「何故?貞操感が人並みにあるからに決まってるでしょ」
全く理解できないと言わんばかりに肩を竦めて見せるローは、頭はいいが常識がない。
海賊だし仕方がないのかもしれないし、そうでなくてはいけないのかもしれないが、非常識な問答をさせられる名無しからしたら迷惑極まりない。
「お前がその気ならこっちにも考えがある」
ローを制している足に力を入れて押し戻していた名無しに、ローは低く呟いて真剣な視線を向ける。
顔が整っているだけあって、真剣な表情には息を飲む。
「これはしたくはなかったが」
仕方ないと言わんばかりに視線を反らし伏せたローは、少し名無しから距離を取るように後ずさった。
体重が分散したせいか、ベッドがギシッと更に軋む。
今までに見たことがないローの真剣な表情に少し警戒するように本を握り締めた名無しは、いざというときの為にベッドに足を立てた。
「一発でいいから犯らせて下さい!」
ベッドの上で土下座でもするように手をつき頭を下げたローは、なんとも情けない言葉を恥じることなくはっきりと言い放った。
逃げようと構えていた名無しも、逃げようとしていたことすら恥ずかしく感じる程情けない。
「謹んでお断りします」