青春は青リンゴ味!
目の前には傷だけの幼馴染みがいる。
頭に藻を生やしたような頭をしたその幼馴染みは、普段は寝ているだけの特に害のない存在なのだが、たまに何かが切れたように喧嘩をする。
そのせいで猛犬だとか言われている。
「馬鹿だなぁ、ゾロは」
水道で冷やしたハンカチタオルを口元に押し付けると、ゾロは一瞬眉間のシワを濃くした。
ムスッとしているのはいつものことなのでたいして気にはならない。
結構悪そうな顔をしているが、優しいと思う。
自由奔放なルフィのわがままに付き合えるぐらいだし、友達の為に怒れるタイプだ。
いかんせん短気なので怖がられているが、女子の間では男らしくて格好いいと言われている。
そんな女子にちょっぴり嫉妬してしまう自分がいる。
ゾロのことを知ってると言わんばかりにぺらぺらと話す女子を見ると私の方が知ってると言いたくなるのは、間違いなく性格が悪いからだ。愚図だと言われて疎まれている自分がそんなことを言ったところで、負け惜しみのようにしか聞こえないので言わないが。
「あんまり喧嘩ばっかりしたらダメだよ」
「したくてしてんじゃねェよ」
「じゃあしなきゃいいのに」
喧嘩をするから内申も悪くなるし、周りに誤解される。
これで喧嘩が強いからそれも問題だ。
「誰のせいだと思ってんだ」
「……その言い方だと私のせいみたい」
不機嫌そうなゾロの表情に、思わず目を反らす。こういうときは基本自分が悪いときだ。
自分が悪いんだなということは何となくわかるが、心当たりがないだけに更に居心地が悪い。
「グズグズ言われて黙ってんじゃねェよ。お前がそんなんだから……」
中途半端に切れた言葉が気になって視線を戻したが、ゾロはなにかを言おうと口を開けたまま固まっていて、目があった瞬間口をゆっくりと閉じた。
「もしかして私のせい?」
「あ?」
「喧嘩したのって、私のせいなの?」
「俺はなにも言ってねェ」
途中で止められて、それに気がつかないほど鈍くはないと思う。でも言葉を一度飲み込んだゾロは、それを吐き出すことは二度とない。
そっぽを向いて黙り込んでしまったゾロの口元に再び冷たいハンカチを押しつけた。
「ゾロ、ありがとうね」
「なにもしてねェよ」
傷だらけの横顔がこんなに嬉しく感じるなんて、相当性格が悪い。
「それでもありがと」
青春は青リンゴ味!