突発プロポーズ






年上の幼馴染みは、仕事は出来るのに家事は全く出来ない。
しかも日常の無気力さが半端ないのでまともに彼女も出来ない。

そんな幼馴染みの世話をしていたら、何故か身体の関係を持ってしまい、今は通い妻状態だったりする。


付き合ってる人はいるの?と聞かれても即答が出来ないが、全く情がないわけでもない。
休みの日にはせっせと掃除と片付けをし、料理はほぼ毎日作る。

これだけ見れば付き合っているようにも見えなくもないが、デートや一緒に外出などは一切ない。


「私たちって付き合ってるの?」

「あー…そういうの、面倒くせぇなァ」


ご飯を待っているクザンは、相変わらずベッドから出る気配はなく、ごろごろと寝転んだまま本を読んでいる。
名無しが見るクザンの姿というのはいつも同じ、散らかった部屋で寝転がっている姿だ。

こんなだらしがない一面しかしらないが、会社ではそれはもう有能でかなり評価されているらしい。


「まぁ、そう言うと思ったけどさ。優しさが足りないよね」


出来上がった料理を適当に片付けたテーブルに置きながらため息を吐く。
料理が運ばれてきているのにたいして反応しないのもいつものことだ。


「そうなると私はただの家政婦ってことになるんだけど」

「あらら、別にそういうわけじゃないでしょうよ」

「違うの?」

「家政婦だなんて思ってないよ」

「それは初耳」


怠そうに起き上がり目の前に運ばれたご飯をモソモソと食べ始めたクザンは、半分以上閉じた目で名無しの方を向いた。


「見りゃわかるでしょうよ」


美味しくなさそうにもそもそと咀嚼するクザンは、意外そうな顔で首を傾げた。

どうみたって家政婦みたいなものだ。いや、給料も貰えないから家政婦以下だろう。

あからさまに顔をしかめていたせいか、クザンは少しだけ気まずそうに目を反らしてご飯を口の中に押し込んだ。


クザンの面倒をみているせいか家事のスキルは上がっているが、それを発揮できるタイミングがないため彼氏はできた試しがない。
クザン同様に婚期を逃してしまう気がする。


「見合いでもしてみようかな」

「俺と?」

「クザンとしてどうすんの」


美味しくなさそうにご飯をダラダラ食べるクザンを頬杖をつきながら眺めていた名無しは、大きなため息を吐いて顔をしかめた。


「でもアンタが結婚するなら俺しかいないでしょうよ」

「なに言ってんの?頭大丈夫?」

「あらら、間違えた。結婚するなら俺とすればいいじゃない」

「たいして変わってないよ」

「まぁ、細かいことは気にしなさんな」


ひらひらと手のひらを揺らしたクザンは最後の味噌汁を啜って茶碗を重ねて置いた。


「その適当具合はなんとかならないの」

「適当に言ってるわけじゃないんだけどね」


どう考えても今考えましたと言わんばかりの台詞にはため息しか出てこない。
人生で最大の決断を思い付きでするなんて、本当に馬鹿だ。








突発プロポーズ


「あらら、一応本気なんだけど」

「わー……嬉しー……」



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