ふ、と目が覚めたら、サッチが隣で寝ていた。
死んだように眠ってはいるが、もうすぐ目を覚ます頃だ。


サッチは睡眠がかなり浅く、そして睡眠欲があまりない。
深夜に眠って、朝日が昇る前に起きる。

そんなサッチの寝顔が見れるなんてある意味貴重だ。

いつもはびっしりと固められている髪が、硬いベッドの上に広がっていて、うっすらとヒゲも生えている。


邪魔するつもりはなかったが、誘われるように髪の毛に触れると、サッチの眉間に一瞬シワが寄った。


「……やべー……もしかして寝坊した?」


しゃがれた声でサッチが呟く。
口は開いたが、まだ眠いせいで瞼はなかなか上がらない。

寝坊なんて言っても、本来ならサッチは隊長なんだから少しぐらい遅れたところでなにも言われることはない。


だが、サッチ曰く家族なんだから上も下もないらしく、寧ろ隊長は兄貴であり、兄貴がしっかりしなくてはいけないという認識だそうだ。


「いんや、私が早く起きただけー」


がしがしと頭を掻くと、濡れたまま寝てしまったせいか、髪の毛がキシキシした。
サッチの髪の毛はさらさらしていたのに、凄い敗北感だ。


「早く起きて俺にエロいことしようとしてたんだろ」

「朝から逞しい想像力で羨ましい」

「エロいことを考えるのは日々の活力だからな」


眠そうにベッドに転がったままニヤニヤと笑うサッチは、眠気からか目がなかなか開かない。
目を閉じたままニヤニヤ笑うその姿は不気味にしか見えない。


「なに?朝からエロいこと考えてんの?」

「いやー、寝たフリしてたら名無しから目覚めのキスしてもらえるかなぁって思って」


うっすらと開いた唇を食むように軽く重ねると、ぼさぼさの髪をサッチの指がとくように撫でる。触り心地の悪い髪なんか撫でてもしょうがないのにと思いつつも、サッチに撫でられるのは嫌いじゃない。


「そろそろ起きないと間に合わないんじゃないの?」

「聞こえねぇ」

「サッチ、大好き」

「俺も好き」

「聞こえてるじゃん」

「バレたか」


不機嫌そうに唇を尖らせたサッチは、撫でていた手で頭を引き寄せて再び唇を重ねた。
ちゅっ、と幼稚なリップ音と共に離れた唇の代わりに閉じていた目がゆっくりと開いて、視線が交わる。

優しくもあり怖くもあるその瞳にぞくりと背筋が震えて、甘美な痺れが足先まで伝わった。


優しい視線に引き寄せられるように再び唇を近付けると、下唇を強めに噛む。


「地味に痛ぇんだけど」

「私だけがサッチに囚われてるのは癪だからね」


じんじんと身体を走る痺れを伝えるように傷付いた下唇を爪で引っ掻くと、サッチはじわりと滲んだ血を舌で舐めとって笑った。


「痛くて今夜は寝れねぇかも」


誘うようなサッチの言葉に私も、とだけ返して笑った。









メーデー、メーデー!





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