生活用品を買い足すために店を色々と訪れたのだが、どの店に立ち寄っても売り切ればかりで全く買い物にならない。
理由はただ一つ、白ひげ海賊団が買い占めているのだ。大家族なだけあって買う量も半端ない。


「水だけはなんとか確保出来たけど食料は危うい……」


やっと見つけた缶詰めを紙袋に詰めて貰ったが、長期航海するために必要な量には程遠い。
いくら節約しても無理なものは無理だろう。


「あ……」


食料を求めて次の店に入ろうとした瞬間引いてもいないドアが開いて、中からサッチが出てきた。


「残念、ここも売り切れだ」

「みたいですね」


名無しの腕の中にある紙袋を見たサッチは、悟ったように笑ってポンポンと名無しの肩を軽く叩いた。
慰めると言うよりも小馬鹿にしている感じだ。


後手後手になってしまっているらしく、違う方向から店を回ればよかったと反省する。


これでも海軍でも計画性のある人間に分類されていたし、自分で言うのもなんだが真面目なタイプだ。
今回の上陸についてもきちんと計画を立てていたつもりだったのだが、こうも先を越されてばかりだと海賊はもう少し不真面目で行き当たりばったりでいて欲しいと思ってしまう。


「前も思ったんですけど意外に真面目な一面もあるんですね」

「こればっかりは手ェ抜いたら家族が餓死するからな。真面目とかじゃねぇよ」


相変わらず嫌そうな顔をしたサッチはひらひらと手を揺らして短く溜め息を吐いた。


「っておたくみたいな教科書大好きなただのくそ真面目なやつにはわかんねぇだろうけど」

「ちゃんとわかりますよ。それに海軍にいたからって別に情がないわけじゃないです。そもそも海軍と言うのは日々人々の健やかな生活の為に」

「あー…はいはい。真面目な名無しちゃんは不真面目菌が移らねぇように町外れにでも行ってろよ」


しっしっ、と追い払うように手を揺らして言い放って去っていったサッチは相変わらず嫌そうな顔をしていたのだが、サッチの言葉を鵜呑みにして町外れの店に行ったら本当に手付かず状態の店が一件だけあった。
「後から買い物に来るやつがいる」とコックの格好をした男が食料をわざと取り置きしていった、と店主が教えてくれた。


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