ふざけた人生を送ってきたせいなのか、そもそもの性分なのかは知らないが、名無しの言動がいまいち読み取れないことが多々ある。
年の功というか、ある程度頭を使って生きてきたから
名無しぐらいの人間なら簡単に誘導も出来ると思っていたし、実際出来ていたと思う。人のベッドの上で正座をしている名無しを見る前まで。
「……いい度胸してるじゃねェかこの野郎」
呆れと怒りで語尾が震えて、それを隠すように笑いながら煙草に火をつけた。
頬の肉がひきつって、笑いたいのか怒鳴りたいのか呆れたいのか、自分でもよくわからない変な感情に苛まれる。
確かに聞きたいことがあるならベッドの上で聞けとは言ったが、それはそんなことは出来ないであろうということを見越してのことなので、正確には聞くなと言うことだった。
堅物でまじめな名無しが人の部屋のベッドに正座をして待っているなんて誰が想像できようか。
「お疲れ様です。聞きたいことがあったので、この間言われたようにベッドで待たせていただきました」
「……意味がわかってて乗ってんだろうな?人のベッドに」
紫煙を吐き出しながら、煙草を挟んだ指で名無しの座っているベッドを指差すと、眉間にシワを寄せた。
「サッチさんが私の質問に答えて下さるなら、別に構いません。私相手じゃ機能するかわからないですが」
平然とそう言い切った名無しは、よくない意味で海軍でもまじめに生きてきたのだとなんとなく理解した。
ただでさえ男が多い世界で、こういったことは正義の集団でも対応を学習する程度の回数受けてきたのだろう。反応からして応じたわけではなさそうだが、こういったことに恥ずかしがって嫌がるのは逆効果だと言うことはよくわかっているらしい。
「サッチさんって私のこと好きなんですか?」
答えるとか答えないの前にさっさと切り出した名無しの質問は、ある程度予想していた質問だった。あれだけ手を貸して、構えば当たり前のようにわく質問だ。
「さあな。少なくともまじめちゃん相手に興奮するけど」
からかうようにそう答えると、名無しは予想していなかったぐらい残念そうな顔をして、目を伏せた。目を伏せる際に、そうなんですか、と呟かれた言葉が更に哀愁を漂わせている。
思わず紫煙を吹き出してしまった。