深夜には大盛り上がりしていた宴だったが、白ひげが休んだこともあり、今はだいぶ落ち着いてきてはいる。
とは言ってもまだまだ飲み足りないクルーは多く、まったりと甲板で飲んでいる。
ひっきりなしに注がれていた酒も漸く底が見えて、思わず安堵の息を吐いた。
「結構酒強ェじゃねェか」
「みたいです。こんなに飲んだの初めてだから私もびっくりしてます」
せっかく底が見えてきていた樽ジョッキに、問答無用で並々と酒が足されて、名無しは思わず苦笑いした。
本来ならもう無理ですとお断りしたいところだが、ついこの間まで嫌悪感剥き出しだったマルコに注がれたこともあり、笑って誤魔化すしかなかった。
胃の中は既に酒でだぼだぼになっている。
「まぁ、強い酒が出てきてねェからな。粗方どっかの誰かさんが度数制限してんだろい」
フン、と短く鼻で笑ったマルコは顎で船内の方を指して、シニカルに笑った。
言われてから改めて周りを見てみると、寝ている酔い潰れてクルーは殆どおらず、みんなそこそこにしか酔っ払っていない。
酒になれていないはずの名無しですらぴんぴんしているのだ。体質的に酔いにくいのを差し引いても、アルコール度数が低いというのは間違いではなさそうだ。
「ど偉いやつに好かれたもんだな、お前も」
「サッチさんのことですか?」
「自覚があれば上等だよい。あいつの好意はひん曲がってるからな」
呆れたようにそう言ったマルコは、太い息を吐き出してから自分のジョッキを名無しのジョッキに手荒くぶつけてから酒を飲み干した。
結構な量がこぼれたが、海賊はそんな細かいことは気にしないらしい。
「アイツとは長らく一緒にいるが、未だに理解できねェ行動を取るときがあるよい」
「……優しいですよね」
「あれは優しいとは言わねェだろい」
名無しの言葉をばっさりと切り捨てたマルコは、ないないと言わんばかりに手をひらひらと左右に力なく揺らした。
客観的に見れば陰口にも聞こえるが、マルコが言うと家族の自慢のように聞こえるから不思議だ。