モビーの上は静まることはなく、さらに盛り上がっている。
全てがわかっていたかのように宴が始まり、そして次々と料理と酒が運ばれてきた。


運んでいるのは4番隊のクルーだとハルタがこっそり教えてくれた。
何故こっそりなのかと言うと、名無し自身がこそこそと人垣の中にサッチの姿を探していたからだと思う。

すごくいい笑顔で名無しの肩を叩いたハルタは、4番隊は宴のときはいないよ、と爽やかに教えてくれたのだ。
探していたのがバレたのかと思うと、恥ずかしくてハルタの顔があまり見れなかった。

異性を意味もなく探すなんてこと今まで一度もしたことがなかったのだから、それに気がつかされたようで言葉すら出てこなかった。あの時の顔は、ゆでダコもビックリするほどだったに違いない。


「名無し!ちゃんと飲んでるか?いやあんま飲ませない方がいいのか?女だもんな一応」


べしべしと遠慮なく肩を叩いたエースは、持っていた樽ジョッキを渡すか迷った挙げ句自分で飲み干してしまった。
目がだいぶ据わっているので、相当の量をのんだのだろう。心なしかエース自身から酒の匂いがするような気がする。


「これで晴れて俺の妹だな!ビブルカードいるか?いや俺今持ってねェや!」


自分で言ってゲラゲラ笑ったエースは本当に楽しそうで思わずつられてしまった。
他のクルーもそうだ。こんなに沢山いるのに、みんなそれぞれが楽しそうで親父である白ひげをどれだけ慕っているのかがひしひしと伝わってくる。

その一員になれたのかと思うと嬉しい反面、何故突然という不思議になることもたくさんあるのだ。
その答えを知っているのは、この宴が始まってから姿を見せないサッチなのだと思う。


「ラクヨウ!俺、妹初めてだからどうしたらいいかわかんねェよ!」


並々と注がれた酒と大きな肉を手にうろうろと落ち着かないエースにラクヨウは名無しを見て首を傾げる。


「なに言ってんだエース。名無しはエースより年上だろ、なあ?」


言い出しにくかったことをラクヨウがさらりと言葉にして、エースは名無しの方を見て目を丸くした。妹だ妹だと喜んでいたので言えなかったが、確かにエースよりも年上だ。

ラクヨウの問いかけに軽く頷くと、エースは持っていた酒を一気に飲み干してからラクヨウに泣きついていた。

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