静まり返った海軍支部の中は、通常では考えられないような警備の薄さだった。
調べたところによると、どの支部に比べても海兵の数はかなり少ない。


島を制圧することにそこまでの人力を必要としないからなのか、裏切る仲間を少しでも減らしたいからなのかはわからない。
少なくても潜入する側としてはかなり好都合ではある。
本来なら海兵として潜入したかったのだが、支部に女性が一人もいなかったことから諦めて外壁を登ることにした。


島全体が疲労しているからか、海兵たちは本来の仕事を果たしておらず、見張りも談笑しながら煙草を吸っている始末だ。


「……」


おぼつかない足場で息を殺して室内の様子を探る。
外からは海兵の談笑の声、室内からは部下と話をする大佐の声。

窓の外を覗かれたり、見張りが真面目に仕事をしだしたらアウト。その他にも見聞色を使われたらアウト。

色々と崖っぷちにいることには間違いない。


前までの予定ではある程度調べたところで政府と海軍本部に申し出る予定だったのだが、逃げずにきちんとした証拠を出すことにした。
盗みに入るなんて出来ないなんて綺麗事を言っていても、誰も救えずに終わってしまう。


漸く気がついた。
真面目に生きることと言うのは、強者の決めた規則に従うことじゃなく、自分に恥ずかしくない生き方をすることなんじゃないかと。

誰かに評価されることではなく、自分を褒めることができるようになりたい。
その結果が例え馬鹿にされることになっても、世界を敵にまわすことになっても、自分が信じたことを貫くために命を費やすことは、決して無駄にはならない。そう信じたい。


否、信じると決めた。



ばたん、と部屋の中からドアが締まる音が聞こえて、中の様子を見聞色で探る。

だれも居なくなったことと、部屋から十分に離れたことを確認してから、大佐の部屋の窓のガラスを割る。


後戻りは出来なくなったが、なにかが吹っ切れて心の枷が外れたような気がした。


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