名無しのもとへ行っていたエースが帰ってきた。
親父に何かを報告して、それからイゾウに何かを報告しているのを目撃した。
内容はよくわからないが、名無しのところに行っていたことを考えれば名無し関係だと言うことは容易に考え付く。
しかも今回のことはイゾウがけしかけたことだ。なにも考えなしにエースを行かせたわけではないだろう。
「あ、サッチ。ただいまー。飯くれ飯!」
視線に気が付いたエースがこちらを見て、お腹を擦りながら眉を下げた。
最近エースは人の顔を見たら腹が減るんじゃないかと思うほど条件反射で飯を要求する。
挨拶と飯くれはほぼ同時だ。
「随分早い帰還だったな」
飯のことはスルーして帰ってきたことに突っ込むと、エースは少し考えるように唸ってからイゾウの顔を見た。
エースからの視線を受け流しながら煙管を口にくわえたイゾウは、紫煙をゆっくり吐き出して短く笑う。
何にたいして笑ったのかは定かではないが、イゾウのことだ、興味ないと言ったくせに名無しのことを聞き出そうとしていることをからかっているつもりなんだろう。
「それが島に残るって話でよー。帰れって言われて帰ってきた」
「島に残る?」
話の経緯が全くわからずにイゾウを見る。
「故郷の島に残ることにしたんだとよ」
短く告げられた言葉は腑に落ちないことだらけで、もはや疑問が出てくることもなかった。
「気になってちょっと調べたらアイツの故郷、海軍に占領されてんだよ」
「海軍ってお仲間じゃねぇか。まじめちゃんやるせねぇだろうな」
エースがそうそうと頷きながら頭を掻きながら唇を尖らせる。
別行動を取っているときに色々と調べたらしいが、これもまたイゾウが企んでいたことの一つだろう。感心するほど抜け目がない。
「政府に訴える、みたいなこと言ってたから下手したら賞金首じゃね」
「まじめちゃんらしい頭の固さだな。政府なんか動くわけねぇのにな」
名無しのことだから、また肩に力を入れて、他を寄せ付けないようにしながら政府に立ち向かおうとしているのだろう。
「よくて賞金首、悪くてインペルダウン行きだな」
イゾウがぼそりと呟くと、エースの顔が少しだけ強張ったように見えた。