海軍に居るときから海軍と海賊が裏で繋がっているという報告がちょこちょこと上がってきてはいた。
勿論本部の方でも対策や調査などはしていたが、十分に対応出来ていなかったのは確かだ。
癒着は当然のこと、支配下に置くことや非人道的な取り調べなど、色々と禁止されていることはあるが、目が届かずに管理者に一任されていることが殆ど。
時には一任されている管理者自体が悪事に手を染めていることがある。そうなってきた場合はもう手の施しようがない。
「……」
わかっていたとは言え、その現場を見るのは気分が悪い。
それが故郷であり、自分が憧れを抱いていた場所だけあって、その気分の悪さは格別だ。
「お前、大丈夫か?顔色悪いぞ」
地図で変わってしまった島の形を確認していると、顔を覗き込むようにエースが腰を曲げた。
いつの間にか起きていたらしいが、徹夜の脳には些か刺激が強すぎる。
ビクついた心臓を押さえるように胸の中央辺りを押さえた。
「寝不足なだけ、大丈夫」
まさか憧れていた海軍が海賊と癒着していてショックだっただなんて言えるはずもなく、複雑な心境を胸の奥にしまいこむ。
これでもしまだ海軍の階級を持っていたら今すぐ出ていって取っ捕まえてやりたいぐらいだ。
「なぁ、今日はどうすんだ?どうせログはまだだろ?」
地図を眺めていると、エースが太い木を足でぐいぐいと押しながら口を開いた。
何かしたくて仕方がないのだろうが、生憎この島には娯楽施設なんてない。物資不足も目に見えているぐらいだ。
「あの、」
「別行動はなしな」
「え」
独自に調べたいこともあり、別行動を提案しようとした瞬間のエースの言葉に、思わずびくりと肩が震えた。
エースに揺すられた木からは枯れ葉がばらばらと落ちてくる。
「お前のその顔。今言おうとしてただろ」
「いやだって私についてきてもなにも楽しくないし、それに」
腰に差していた刀に手をかけた名無しは、不機嫌そうに眉間にシワを寄せるエースから逃げるように目を伏せる。
つまらないというのもあるが、なによりも海軍の汚いところを見られたらエースからの評価が変わってしまうような気がして怖かった。
「あー、わかったわかった!わかったからそんな顔すんじゃねぇよ。夜にもう一回ここに集合な!」
言葉が上手く出てこない名無しを見るに見かねたのか、エースは乱雑に頭を掻いた。