丸々太った鳥は、空中で丸焼きにされて落ちてきた。
意味がわからないかもしれないが、本当に空中で丸焼きにされて落ちてきたのだ。


方法はシンプル。エースが空に向かって火拳を披露したのだ。
おかげで海軍に見つかり、追いかけ回されるはめになってしまったのだが、原因であるエースはなんとも思っていないのか、冷めてしまった丸焼きを温め直して食べている。


あまりに衝撃的な行動に食欲も大幅に減退したのだが、エースに食えるときに食えと怒られたので少しはお腹に入れたが、海軍に追いかけられていると思うだけで胃が痛くなる。
こんなところが海賊には向いていないところなのだろう。


海軍に追いかけられるのが怖くて海賊になれるはずがない。



自分の気の弱さにため息を吐いた名無しは、身を隠すために寄り添っていた木に頭を預けながら、爆睡しているエースを見る。大鳥をぺろりと平らげたエースが、その場で倒れるように寝てしまった為、強制的に名無しが見張りになったわけだ。

とてもじゃないが眠れる気がしないので、見張り自体は別に構わないのだが、罪悪感が凄くて胃がキリキリと痛む。

特別なにをやったわけでもないのだが、海軍に追いかけられているという事実だけで心臓が竦んでしまう。



船出の時は悪事をする気満々だったはずなのだが、今思えばよくあんな強気なことが言えたものだと思う。

ぼんやりとスモーカーとの会話を思い出していた名無しだったが、遠くの方に人の気配を感じて息を殺した。


「……」


神経を集中させて、気配を消すと、微かだが人の声が聞こえてくる。


「たったこれだけか」


地を這うような低い声はなにかに不満を感じたらしく、機嫌が悪そうに呟く。


「そんなこと言ったってよー。もうこの島は死んでるんだぜ?」


それに反応したもう一人の声は、酒で焼けたのかガラガラ声だ。最初の男は知性を感じるが、もう一人の方からはあまり感じられない感じだ。


「役に立たんクズめ」

「アンタ達だって海軍の中で株が上がって相当美味しい思いしただろ?」


宥めるように声をかけた男の言葉に目を見開いた名無しは、二人の男の姿を探すように暗闇の中必死に目を凝らした。

声がする方に見えたのは、間違いなく正義と書かれた海軍のコートだった。


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