久しぶりに見た故郷は随分とどんよりしていた。
元々あまり明るい島ではなかったのだが、それにしても酷い気がする。
その酷さは海賊にむしりとられていた時以上だ。
景色も島の真ん中に海軍基地が立っていることで、がらりと違って見える。
「お前の家族も穴の中で働いてたのか」
カンカンとあちらこちらから発掘音が聞こえてくるのが不思議らしく、エースはきょろきょろと辺りを見渡しながら島の中を堂々と歩く。
いくら背中のマークを隠して、フードを被っているからといって海軍基地の目の前をこんなに闊歩するのも気が引ける。
「え、エース…もうちょっと隠れた方が…いいと、思うんだけど」
すげーすげーときょろきょろしながらど真ん中を闊歩するエースは田舎では目立ちすぎる存在でしかない。
「なんでだよ。俺は基本的にこそこそすんの好きじゃねぇし」
こそこそと小声で注意してみたものの、名無しの気遣いはエースに伝わることはなく、逆に迷惑そうな顔で首を傾げた。
海軍にいた時にエースを見かけたときもそうだった。
いくら白ひげ海賊団とはいえ、億越えの賞金首が一人で街をうろついていて、海兵である名無しにも普通に話しかけてきたのだ。内容としては道がわからないとかそんなくだらない理由だったと思う。
あまりにもナチュラルに話しかけられたので、人間違いかと思うほどだった。
「……それにしても」
エースの奔放さはとにかく、視界に入ってくる島の様子はあまりにも暗すぎた。
住民達の目には生きる気力が見えず、廃人が機械的に動いているように見える。
「とりあえずなんか食おうぜ!腹へった」
ぐきゅるきゅる、と盛大に腹を鳴らしたエースだが、島に着く少し前にご飯を食べたばかりだ。
モビーと違い食料庫も小さい名無しの船ではエースの胃袋には追い付けそうもない。
「なにか食べるにも店も開いてそうにないですね」
閑散としている町はどの店もクローズの札を下げている。
店自体も廃れていて、とてもじゃないが定休日といった感じには見えない。
「よし、ならあの鳥を食おうぜ」
「え……」
食べ物を諦めきれないエースが指差したのは、鉱山の上を飛び回るよく太った大型の鳥だった。
確かに海軍でも野営はあるが、こんなにワイルドな感じではない。改めて海賊の生活能力の高さを知った。