「なぁ、次どこ行くんだ?」
「もぐら島の予定ですよ」
「……あんま美味そうな食べ物はなさそうだな」
「ですね」
どんよりとした島を見たエースは、少しがっかりしたように肩を落とした。
モビーは基本的に縄張りを巡回したりするため、永久指針を使ったりするので順路が異なる。
いつの間にか勝手に船に乗っていたエースは、ちゃっかり名無しの旅に同行する気らしい。
なんでついてくるのか聞いてみたが、海賊は自由だから、としか答えてくれなかった。
今度の島は名無しにとって特別な島なのだが、正直なんてことのない島だ。
島自体が鉱山みたいなもので、どこそこに発掘の為の穴が空いている為、もぐら島と呼ばれている。
名無しが幼少期を過ごしたもぐら島は、鉱山が有名なだけあり昔はよく海賊に狙われていた。
それを海軍から来た海兵達が助けてくれた。海軍に入った理由も助けて貰ったことに感動したからだ。
「懐かしいなぁ」
島に戻るのは海軍に入ってからは初めて。何度も帰ろうとしたのだが、忙しくてなかなか帰ってこれずにいた。
滞在していた島から近かったし、丁度暇になった今こそ帰ろうと、日記を読み返して思った。
「穴ばっかだな」
「鉱物を掘り出すためにはあの穴が必要なんですよ」
「へー」
船縁に腰掛けて、島の方をぼんやりと見ていたエースはあまり興味がないのか気の抜けたような声で相槌を打つ。
「エースは自分の船みたいなのを持ってるんじゃなかった?わざわざ面白くない島に行かなくても」
「ストライカーなら置いてきた。持ってるとお前が俺を追い出すだろ」
「追い出すなんてそんな」
よくわからないが、気を使って言ったことが裏目に出てしまったらしい。
「俺が教えてやるから覚えとけよ」
「え?」
「こういうときはついてきてくれてありがとうって言え」
「そんな図々しいこと」
テンガロンハットのてっぺんを手で押さえながら説くエースは、反論しようとする名無しの前に制止させるように人差し指を突き付けた。
突きつけられた指先にびくりと怯んだ名無しを睨み付けたエースは、にかっと白い歯を見せて笑う。
「わがまま上等!俺たちの家族になりたいんだろ?」
エースの言葉に名無しはごくりと唾を飲み込んだ。