「本当に助かりました。ありがとうございます」


戻ってきたレイピアを腰に差し、財布の中身を確認するように軽く揺すった。
買い物は済ませた後だったので入ってなかったはずだったが、何故か中身がびっしり詰まっている。


「中身って元々いくら入ってた知らねぇし、盗んだやつも教えてくれなかったから盗んだやつ等の金全部突っ込んどいた」


悪びれもなくそう笑うサッチだが、盗まれていた財布はまだしも金を取ったら強盗だ。
もちろんサッチは海賊だし、そんなこと気にもしていないのだろうが、名無しにとっては複雑な心境だ。


「不満そうな顔してるよい」

「ま、そこは真面目ちゃんだからな」


嫌味とも取れるようなマルコとサッチの言葉にぎくりと肩が震える。
海賊になりたいなんて意気がっておいてこんなことぐらいで動揺しているなんて馬鹿みたいだろう。


「不満なんてとんでもない!不甲斐ない私のせいでお二人の手を煩わせてしまって申し訳ありませんでした」

「おー……なんか気持ち悪い感じのお礼だな」


すみません、と頭を下げた名無しにサッチが訝しげな視線を向ける。
名無しとしては純粋にお礼をしたつもりだったが、サッチやマルコからしてみれば丁寧なお礼にはなにか裏を感じてしまうのだろう。


「海軍なんてお綺麗な言葉を並べるだけで腹の中じゃなに考えてるかわかりゃしねぇよい」


マルコの疑うような言葉は未だに痛む後頭部に染み込む。
こんなときに限って嫌な記憶が脳裏をチラつく。



本当のことを言うなら、海賊になりたいわけじゃない。
自分の気質に合わないことぐらい自分でも理解しているつもりだ。

ただ絶対に裏切らない仲間に、家族になりたくてここまで来た。海軍で見つけられず、白ひげ海賊団なら、と思い立ったのが今ここにいるただ一つの理由だ。


もう二度と仲間に手をかけるようなことはしたくない。例えそれが正義の名のもとの命令であっても。

心を殺してまで正義を貫くことは出来なかったのは、ある意味自分の弱さだったのかもしれない。

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