深夜だというのにざわざわと騒がしいのは、人口が一時的に跳ね上がったからだろう。こういうときは決まって騒ぎが起きやすい。
昔とった杵柄、とでも言うのか、騒ぎには鼻が利く。


「……」


と言うか、関わりたくないのにか鉢合わせしてしまうことが多い。


「なに見てんだコラ。見せ物じゃねぇぞ」


船に向かうための路地を抜けようとしたところ、追い剥ぎまがいのことをしている集団に鉢合わせしてしまい、引き返すべきか悩んでいるところだ。


本当のことを言うと助けたい。元々海軍だったぐらい人助けは好きだし、弱いものイジメは大嫌いだ。
だからいますぐ抜刀したいのは山々なのだが、もう海軍を辞めてしまったし、今は海賊に憧れている身だ。


「聞いてんのかテメェ」


追い剥ぎに襟首を掴まれたまま考え込むが、答えはそう簡単には出ない。
やっぱりこの場から逃げようと決めた瞬間、追い剥ぎに集られている男に目を見開いた。

そこにいたのは白ひげ海賊団の7番隊隊長であるラクヨウ。酔っぱらっているのか気持ち良さそうに寝ているように見える。

「見なかったことにしようと思ったんですが、そうもいかなくなりました」

「は?」


襟首を掴んでいた男の手首を掴んだ名無しは、反時計回りにひねりながら下に引っ張り、男の身体を簡単に倒れ込んだ。


「いてててっ!くそっ離せ!」

「その人私の知り合いです。返してください。財布も」

「ふざけなんなこのアマァ!」


ひねった腕を押さえつけると、倒れ込んだ男の骨がミシミシと悲鳴を上げて悲痛な声が響く。
そんな悲痛な声を無視して奥でラクヨウの装飾品を物色している男を睨み付けると、男は怯んで手を引っ込めた。


「盗ったものを速やかに返してください。そうすれば荒立てることはしません」


腰にかけていたレイピアに手をかけながら口を開くと、男は目を白黒させながら持っていた装飾品や財布を寝ているラクヨウの上に落とした。


「貴方も、なるべくなら真っ当に生きた方がいいですよ」

「ひっ……」


腕を取られたまましゃがみこむ男からゆっくりと手を離すと、仲間であろう男を置いて小さな悲鳴だけを置いて逃げていった。
追い剥ぎの被害者であろうラクヨウは相変わらず気持ち良さそうに寝ている。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -