ヒナ嬢ふぁんくらぶ



新兵は基本的に雑用が主な仕事だ。それは自分の直属の上司から命令されることもあれば、全く知らないようなやつからいきなり仕事を押し付けられたりすることもしばしばある。
多分見た目で新兵だと言うことがバレるのだろうが、流石にこいつから命令される謂れはない。


「おい、聞いてんのか」

「なんすかなんすか」

「これを持っていけって先輩が言ってんだよ。何回も言わせるな」

「えっ」

「返事ははいだろうが」

「なんで?」


薄いピンクの髪の毛をいけすかない感じに伸ばしている頬に傷がある男は、見下したように名無しを見ながら地図やら資料やらが入った箱を押し付けてきた。
こういう雑用を押し付けられることは決して珍しいことではないし、新兵の時はわりと誰でも体験する洗礼みたいなものだ。
雑用とは違う雑用というのだろう。

だがそんな洗礼をありがとうございますと素直に受けるほど器用には生きてきていない。


「お前新兵だろ」

「え?髪の毛がピンク?」

「お前、新兵だろ!」

「そうだけど?新兵かと聞かれたら私は新兵だけど?」


両手に荷物を抱えていたと言うのもあるが、それ以上に上から物を言ってくるような態度が一番気にくわない。
ピンクの髪の毛ということも気にくわない。だいたい言ったら悪いが二等兵辺りだろう。
新兵となんらかわりはないと思う。


「地毛に文句つけんなコラ」

「おっと、自己主張の激しい可愛いお口が失礼」


わざとらしく目を反らしながら謝ると、ピンクの髪の毛の男は露骨に嫌そうな顔をした。
丁度その時、カツカツとヒールの音が廊下に響いてピンクの髪の男の顔が引きつる。否、引きつるというよりは引き締まったといった方がいいかも知れない。


「フルボディ、わたくしが頼んでいた仕事は終わったの?」


凛とした声はやけに心地いい声で、声と同時に独特の紫煙の香りもした。


「大佐、今丁度こいつに」

「わたくしはアンタに頼んだのよ。ヒナがっかり」


カツン、とヒールの音が廊下に響き、フルボディと呼ばれた男の顔が恍惚なものに変わる。
その視線はまさにピンクの髪の美女に注がれていて、流石に引いた。


「しまった、こいつは美人に罵られることを悦びにしている系の性癖をもったエイチイーエヌティーエーアイ!所謂変態だ!!」










ヒナ嬢ふぁんくらぶ


「あら、アンタどこかで見たことあるわね」

「でもピンク頭の気持ちがわかる気がする!」



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