タイム人生


クロコダイルのニュースの真相を聞きにスモーカーの部屋に行ったのだが、部屋の中には誰もいなくて静かなものだった。

いつもならスモーカーが居なくてもたしぎが書類整理をしていたりするのだが、今日は朝からいた気配もない。
それぐらい部屋の中の空気が冷たい。


「なーんだ、誰もいないのか」


がっかりと肩を落とした名無しはそのまま勝手に部屋の中に入って、スモーカーがいつも座っている少し高そうな椅子に腰掛けた。
クザンの椅子にもよく勝手に座るが、スモーカーの椅子の方が落ち着く。多分身体がより貧相な方に馴染むようになっているのだと思う。スモーカーの椅子よりも廊下に座っていた方が落ち着くのはきっとそのせいだ。


「なんか世界を征服した感じ?」


自分で言っていてちょっとテンションが上がってきた。
別に世界を征服したいわけではないが、偉い人の椅子に座ると偉くなったような気持ちになる。クザンの椅子に座っても偉くなったような気持ちになれないのはクザン自体に威厳がないからに違いない。

高ぶってきた気持ちを押さえることが出来ずに机に足を乗せてふんぞり返る。
たしぎが見たらきっと顔を真っ赤にして怒るのだろう。そんなことを思っていたらドアが開いてたしぎと目が合った。


「……」

「……」


いまいち状況が理解できないのか瞬きを何回か繰り返したたしぎは少しなにを考えてから部屋を確認するように頭上を確認した。


「なにを……されてるんですか?ここはスモーカーさんの部屋ですよ」


気持ち声が震えて聞こえるのはやはり怒りからなのかもしれない。
たしぎはスモーカーのことになるとすぐに怒る。それだけ尊敬しているのだろうが、怒りすぎて我を失うようなことが多々ある。


「そこを退いて下さい名無しさん!そこはスモーカーさんの席です!」

「お、やるの?やっちゃう?いまここでそれを抜いちゃう?丁度暇だったから私は一向に構わんよ!!」


身体には不釣り合いな大きな刀を抜こうとするたしぎを見て勢いよく立ち上がった名無しは挑発すると同時にたしぎと同じように刀を探して手を伸ばした。が、腰にはいつもの刀はなく、掴めることはなかった。


「タイム!……刀忘れてきたからまた今度!」









タイム人生

「それなら早くそこを退いてください!」

「今退こうとしてました!ついでに足のせたところは拭いときますね!」



prev next
90
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -