「貴様と言うやつは……いったい頭の中はどうなっとるんだ」
新聞を丸めたものでバコバコと名無しの頭を叩くセンゴクの顔にはタイヤで轢かれた跡がくっきりと残っている。
勢いでひき逃げをしたものの、目撃情報からすぐに確保されてしまい説教部屋に連行された。
「なにかに当たったのがわかったが怖くて確認できなかった」
「目の前にいるのを堂々と轢いていっただろうが」
「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」
「そうだろうな、意図的に元帥を襲えばそれだけで重罪だぞ」
呆れたようにため息を吐いたセンゴクは、丸めていた新聞を机に放った。
炙られたイカのように反り返っている新聞の一面を飾っているのは、どこかで見たような顔に視線が自然と新聞の方に向く。
特徴的な麦わら帽子を被ったその青年は、確かコビーが熱く語っていた海賊だったはずだ。
海賊王になると豪語している変に魅力的な青年らしい。
手配書にこれだけ笑顔で載っているのも珍しく、どこか見たことがあるような親近感がある。こういう人間をたまに見かけるが、基本的敵味方関係なくたらしこんでしまう人間たらしが多い。
もちろん本人に自覚はなく、そんな気は一切ないのだろうが。コビーみたいな正義の堅物が海賊のことをよく言うと言うことはそういうことだろう。
認めていなかったが多分コビーはこの麦わらの青年、モンキー・D・ルフィの人間性に惚れ込んでいるのだと思う。
「聞いているのか!」
「おいおい笑わせるなよ!お前の話なんか真面目に聞いてたら頭が四角くなるわ!」
「なんだと!?」
「自転車で轢かれたぐらいでグチグチと……そもそも元帥レベルがそう易々と自転車に轢かれることに問題があるんじゃないの!?そうよ!私はそれを警告したかったのよ!全くこれだから平和ボケした元帥は!さっさと引退しやがれってんだ!」
「今思い付いたことを偉そうに語るな!」
さっきまで机に放置されていた新聞を握り締めてバシバシと机を叩いた。
その時に気がついたのだが、新聞にはよく知った名前も載っていた。
サー・クロコダイル。
実はクロコダイルからは120万ベリーぐらい金を借りてる。
捕まったと書いてあって思わず二度見してしまった。
切り替わっていく世界
「初めての海軍に感謝したわ……捕まえたのモクモクさん?マジぱねぇ!!」
「なんの話をしとるんだ」
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