麗しのヒナ嬢



「お前最近どこにいんの?」


朝御飯であるサンドイッチを口の中に詰め込んでいた名無しは不機嫌そうな声に顔を上げた。
朝が苦手なヘルメッポにとって朝御飯の時間ほど憂鬱なものはないだろう。でも一番不憫なのはそんな寝起きの悪いヘルメッポを起こすコビーだ。

名無し自体朝起きるのが苦痛だと思ったことはあまりなく、寧ろ朝はまだかと早く目が覚めてしまうことがしばしばあるぐらいだ。睡眠時間程面白くないことはない。
そんな名無しからしてみればヘルメッポのような人間は不思議でならない。

もちろん逆もまた然りだろう。


「名無しちゃんは常にみんなの心の中にいるよ☆」


真面目に答えるのが面倒臭かったのでウインクしながら悪戯っぽく答えたら、ヘルメッポが吐きそうな顔をしながら目を背けた。
可愛くないのは予め予想していたが、あからさまなヘルメッポの態度はムカつく。


「なんかもうお前見てると世の中の女性に跪きたくなる」

「マジかよ。そりゃ死病だな死病!」

「意味がわかんねぇよ。なにが死病?お前の顔面?」

「死因は私による検死です」

「もう黙れ。なんかお前と喋ってるとウイルス飛んできそう。頭が悪い感じの」


玉ねぎたっぷりのスープをスプーンで上品に掬って飲むヘルメッポは、嫌悪感剥き出しで名無しの方を見る。
だが、忘れてはいけないのは話しかけてきたのは間違いなくヘルメッポだ。これこそ訳のわからない八つ当たりだろう。
名無しも年がら年中似たような事をするので別に気にはならないが。


「そう言えばお前麗しのヒナ嬢って見たことある?」

「……ケツ顎、私も人の事言えるような頭はしてないけど、お前も鶏頭じゃね」


数秒前に黙れと黙らせたくせに、答えを問うような質問なんかしてくる辺り本当に救いようがない。
だがヘルメッポはそんなことはどうでもよくなってきているらしく、澄ました顔で玉ねぎのスープを飲み込んでいく。
変に上品な辺り、コビーの言っていた元お坊ちゃまと言う話のぐんと信憑性が上がる。


「で、なんだったっけ?ういろう?」

「麗しのヒナ嬢」

「あんまり美味しそうな感じじゃないな」

「食べ物じゃねぇしな」













麗しのヒナ嬢


「どうせゴリラみたいな女だよ。海軍だよ?ムッキムキに決まってんだろ!!」

「自分の顔のこと言ってんの?」



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