試験を受けること承諾したが、まさか筆記試験があるとは思わなかった。
海軍になるために頭脳が必要だなんて聞いたことがない。
体力以外に特技がない馬鹿の集団だと思っていた。
「名無しちゃん、試験中は私語禁止」
「私語じゃありません。心の声です」
「心の声でもダメ」
「つかこの試験、カモメも受かったってこと?信じがたいわ…」
「必修だからなぁ、受かったんじゃあねェの?」
「うるさいよ!試験中だから黙って!」
「あららら、名無しちゃんが聞いてきたんでしょ」
「私の独り言に答えなんかいらん」
あまり見覚えのない言葉が陳列されている紙をひらひらと揺らしながら、名無しは面倒そうに唇を尖らせた。
いくら考えたところで答えはわからない。
あまりにも頭を使いすぎて試験開始3分後には完全に諦めモードに入っていた。こんな問題解けるはずがない。落ちても特に問題はないし、今回は全力を尽くしたと言うことでまた次回、機会があったら頑張ろう。
「落ちたら没収だからね、刀」
名前を書く前に諦めて鉛筆から手を離した名無しに、クザンは面倒そうに二本並んだ刀の一本を指差した。
「なんだって!?なんだその傲慢な言い分は!もともとこの刀は私のだから!」
「あー…、ダメ」
「ガッデム!!」
有無を言わせないようなクザンの態度に、名無しは机を思いきり殴り付けて刀を抜いた。
「暴れても答えは教えないよ」
「……」
動揺することなく、アイマスクを指で押し上げた。
抜刀してるんだから少しぐらい構えるべきだと思うが、それだけ力の差があるということなんだろう。ムカつくが多分それは事実だ。
ムスッとしかめっ面をした名無しはもう片方の手に鉛筆を持ち、立ち上がった。
「よく見てろ!私の実力を見せてやる!!」
威勢よく叫んだ名無しは、鉛筆の後ろを刀で削って数字を書き込んだ。
「原始的過ぎるんじゃねェのかなぁ、それ」
「黙れ!私の底力見てビビんなよ!」
高々と掲げた鉛筆を机の上に転がした名無しは、カッと目を見開いて数字を覗き込んだ。
「3!!」
「……」
鉛筆を再び握り締めた名無しは答案用紙に向かった。
向かったのはよかったが、エンピツは止まったままでなかなか動く気配がない。
「選択問題がない…だとっ!?」
「名無しちゃんって馬鹿だって言われない?頻繁に」
ずっと私のターンっ!
「…まぁ、まぁまぁ大丈夫!!このくらい許容範囲!超許容範囲!」
「それどこから来る自信?おじさんびっくりなんだけど」
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