親戚のオジサン



ニュース・クーという生き物は本当に不思議だ。特に躾られたわけではないのに律儀に手紙やら新聞やらをせっせと運ぶ。

どこにいるかも定かではない人物にもきっちり運ぶクーこそ最強の生き物なんじゃないかと思う。多分明日には忘れてそうだが。


「……」


窓の縁に置かれた手紙の端を手荒に開けて中身を見た名無しはくしゃりと手紙を握り潰して小さく舌打ちをした。
手紙の相手は生きる伝説だか生きるミイラだか言われているとある有名人だ。今現在はシャボンディ諸島に身を寄せており、相変わらず隠れもせずにコーティング屋なんてやっているらしい。

両親の知り合いだったレイリーとは親戚のように付き合っていたが、最近は疎遠になっており、年に一度手紙のやり取りをする程度の付き合いしかない。
そんな状態なのに今手紙が来たのは他でもない名無しが手紙を出したからだ。

握り潰した手紙はその返事。


たしぎがどうしても白骸を捨てきれないようなので仕方なく材料を教えて貰えないか手紙を出したのだが「それぐらいのことがわからないなら直せると思えない」と冷たい返事が来た。


元々白骸は黒骸と対の刀であり、かの海賊王ゴール・D・ロジャーをモチーフに作ったのが黒骸で、副船長だったシルバーズ・レイリーをモチーフに作ったのが白骸。
黒骸はロジャーに渡ることはなかったが、白骸はレイリーの手に一度渡っている。

それがきっかけで両親とは交流があり、刀のことも色々と知っている。
だからわざわざ苦手意識を押し込めて手紙を書いたのだが、素っ気ない返事が来たわけだ。


「このケチジジイ!さっさとくたばれ!」


部屋の隅にあったゴミ箱に手紙を叩き込んだ名無しは八つ当たりするように壁を蹴った。
昔からバカにするような部分が多々あったが、今回の件でそれが明確になった。


「……」


怒りに任せてそのまま仕事に向かおうかと思ったが、部屋のドアを開ける前に思い止まって舌打ちをする。
賞金が外れたとはいえ、海軍の中でレイリーの手紙を無防備に捨てるのはよくはない。


一瞬だけ葛藤した名無しはぐしゃぐしゃっと髪の毛を掻き混ぜてゴミ箱に捨てた手紙を拾い上げてポケットに突っ込んだ。










親戚のオジサン

「私の心は今女神を越えた!」



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テーマ「人外ファンタジー」
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