雷元帥



青い空と気持ちのいい潮風。
空を泳いでいく雲は真っ白で、現実逃避したくなる。


「聞いているのか、名無し!!」


ヒステリックな声が聞こえてこなければ気持ちがいいことこの上ないのだが、生憎目の前にいるのでそれは無理そうだ。
そのヒステリックな声を思いきり出しているのはセンゴク。信じたくはないが頭にカモメをつけている海軍トップである。

海軍に来てからと言うもの、センゴクがまともに話をしているところを見たことがない。
もしかしたら怒鳴るのがデフォルトなのではないかと最近思う。


「おいっ!聞いているのかと言っとるんだ!!」


バァン、と机を弾くような大きな音が部屋に響いて、ちらりとセンゴクの顔を見る。
眉間にはこれでもかというぐらいシワを寄せて、怒りで若干顔が赤くなっている。このまま更に怒らせたら血管が切れて勢いよく倒れそうだ。


そもそも何故たかが一般兵である自分が怒られているかと言えば、クザンを道連れにして無断で遅刻したからだ。
本来なら日帰りできる距離で出掛けたのだが、海に落ちたせいで時間をくってしまい、結果盛大な遅刻になってしまったと言うわけだ。
これだけなら適当に誤魔化せたのかもしれないが、よりによってセンゴクが大将を集めて会議をしようとしたらしく、運悪く見つかってしまった。

それでこの状況だ。
かれこれ2時間は経った気がするが、未だにセンゴクの怒りは収まらずヒートアップするばかり。ある意味元気だと思う。


「あのさ」

「なんだ」

「元帥って暇なの?ずっと怒ってるけど」


いつもならセンゴクの顔を見てるだけで苛々してしまうのだが、今日は怒られ過ぎて怒りは沸いてこない。
寧ろ不思議と身体の芯から冷めてくるような感覚に陥る。


「きっ…貴様…っ!」


怒りに震えたセンゴクの声に反射的に耳を塞ぐ。


「誰が怒らせていると思ってるんだっ!!」

「あらやだ、センちゃんが勝手に怒ってるんじゃん?私は別に怒られたくないし…」

「馴れ馴れしく呼ぶな!私は元帥だぞ!!」


顔を真っ赤にして凄い形相で睨み付けてくるセンゴクは、八つ当たりのように書類をばしばしと机に叩き付ける。
どうやらまだまだ説教は終わりそうにない。










雷元帥

「怒りで発電出来たらセンちゃん一人で本部賄えそうだよね!」

「話を聞け!」


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