ポッキリと折れてしまった刀を目の前に名無しはうんうんと一人唸る。
「直す…直すって言ってもね…基本折れた刀は直らないって言うか…接いでもいいけど飾りにしか使えないんだよね」
「あらら、名無しちゃんたしぎちゃんには直せるって言ったんじゃなかった?」
「あの時は動揺してたんだよ!仕方ないじゃん!眼鏡ちゃんが今にも抜刀しそうなぐらいの殺気を放ってたから仕方なかったんだ!」
「なんじゃ、名無しは相変わらず女には弱いんじゃのう」
「う、煩い山ザル!弱いんじゃなくて勝てる気がしないんだ!!」
「それを弱いと言うんじゃ」
接ぐだけ接いで鑑賞用にするという方法もあるが、名無し的には刀は斬れなければただのおもちゃと同じだ。
どれだけ精巧に接いだとしても実践で使えば接いだところから折れてしまう。
名無しは地面にぐりぐりとわけのわからない絵を描きながら重たいため息を漏らした。
「そもそもさー、作り直すにしても材料が足りなくなっちゃうし」
「なに?そのゴキブリみたいな生き物。ウミムシ?」
「なお、イラストはお話の内容とは一切関係ありません」
ただ単に暇だったから絵を書いていただけだったがまさか蝶々を描こうとしているのにウミムシと言われるとは思わなかった。
絵心がないのは自覚していたが、あまりにかけ離れていたので恥ずかしくなって慌てて踏み消す。
持っていた木の枝がポキリと根本から折れた。
「名無しに白骸が作れるのかのう。あれは名無しのご両親が造った名刀じゃろ」
訝しげに顔をしかめたカクにぴくりと名無しの眉が揺れる。
確かに白骸は名無しの両親が造った刀で、しかも名無しよりも若いときに造ったと言われている。それをお前には造れないだろう、と小馬鹿にされているようでカチンときた。
「つーか私の親が出来たことが私に出来ない筈がない!そうだろクザン!」
「そうだね」
正直出来るか出来ないかは置いておいて、目の前のカクに負けを認めるようなことだけはしたくなかった。
その役に立たない無駄な負けず嫌いな性格が自分の首をミシミシ絞めるわけだが、それはもう諦めるしかない。生まれつきだ。
謙虚さは腹の中に置いてきた!
「名無しは相変わらず乗せやすいのう」
「欠点であり美点だよね」
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