食事の時間じゃないせいか、食堂は閑散としている。
そんな中でガツガツご飯を食べるのは気が引ける、訳がない。
「飯うまっ!この卵の半熟具合…女将を呼べーい!」
「名無しちゃん、ここには女将はいないよ。だってここ海軍だからね」
「言葉の文だから!別に女将とかいらんし」
がつがつと親子丼を口の中に掻き込む名無しは、米粒がぼろぼろと落ちるのも気にせずにどんぶりを傾ける。
そして空になったどんぶりは机の端に重ねて、新しいどんぶりの蓋を開けた。
蓋を開けた瞬間、ふわっと湯気が上がって口からよだれが出そうになったのだが、上に鎮座する緑の球体を見て勢いよく蓋を閉めた。
「……」
「やっとお腹一杯か?」
蓋を閉めたまま、黙り込んでどんぶりを見つめた名無しは、クザンの方に視線を向けて、ゆっくりと首を振った。
「あかん!!緑の人がいた!」
「緑の人?そりゃあ怖ェよなぁ」
「間違えた!緑の…種?果実?だいたいそんな感じ!」
「あららら…名無しちゃんもしかしてグリンピース嫌い?」
「私の嫌いなものは金持ちと緑の球体、それと海賊と海軍と師匠!ついでに自己中も嫌い!同族嫌悪って言うやつだよね!」
蓋をしたままの丼をずずずっと前に差し出して、さりげなく次の丼に手を伸ばす。
「そんなに嫌いなら抜いて食べちゃえばいいんじゃねェの?」
前に出された丼をクザンが引き寄せて、蓋を開けて中を覗き込んだ。
「馬鹿だなクザン。球体様がいらっしゃった位置を見てみろ!凹んでる!!」
「そうだな」
「凹 ん で る !」
「確かにちょっと凹んでるなぁ。気持ち」
「大切なことなので2回言いました」
「今のが大切なこと?おじさんビックリだね。ジェネレーションギャップってやつ?」
鰻丼を確認した名無しはホッとしたように短く息を吐いて、再びガツガツと掻き込み始めた。
「あー…そうだ。あとで試験受けてね、名無しちゃん」
「…なんで?」
もぐもぐと小刻みに口を動かした名無しに、クザンは入隊希望書を差し出した。
「ご飯奢ってあげたじゃない」
「わかった。ご飯奢ってもらったから仕方ない」
机の端に重ねられた丼は、10個に到達した。
だいたいそんな感じ
「正直可愛すぎて落ちると思う」
「大丈夫。容姿は項目にねぇから」
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