「書類届けに来た!」
ばんっと無遠慮に扉を思いきり開けると、中でお茶を飲んでいたボルサリーノが物凄く迷惑そうに顔を歪めた。
「オォ〜、折角休憩してるのになんで名無しの顔なんて見なきゃいけないんだろうねェ…」
うんざりしたような顔でそんなことを言われたら毎日でも来てやりたくなる。
明日から毎日休憩していそうな時間を狙ってドアを蹴破ってやろうかと思う。
「私にも珈琲頂戴よ!じゃないとここに居座るぞ!」
「それは嫌だねェ」
クザンの下について初めての仕事。それがもうあからさまに追い出したいが為に無理矢理作ったボルサリーノに書類を届けるという内容だった。
「これをわっしに持っていけって青雉が言ったのかい?」
「そうだよ。てか紅茶しかねぇ!私紅茶あんまり好きじゃないんだよね。だってマリージョア臭がするじゃん!」
「どう見てもわっし宛じゃあないように感じるんだけどねェ」
ひらひらと書類を揺らしたボルサリーノは名無しの言葉をことごとく無視した挙げ句、ぐしゃぐしゃと書類を丸めてゴミ箱に放り投げた。
綺麗な放物線を描きながらゴミ箱に落ちていった書類を名無しは眺めながら紅茶をカップに注ぐ。
持っていけとは言われたが、死守しろとは言われていないし、正直たかが紙切れ。
そんなものゴミ箱に行こうが燃えようがわりとどうでもいい。
「そんなことより次は珈琲を用意しててよね!」
「オォー、相変わらず図々しいねェ…死んだらいいよォ」
元々ボルサリーノには嫌われていたが、海軍の大将に死ねばいいと言わしめる自分は多分特別な存在なんだと思う。
と言うかそう思わないとやってられないし、清く図々しく生きていけない。
「出来れば茶菓子も頼む」
「……」
名無しの方を呆れた様子で見るボルサリーノは、もう言葉を発するのも嫌なようでため息だけを吐き出した。
何だかんだで付き合いだけ言えば軽く2、3年はある。
仲良しだった記憶はないが、お互い無視するほど仲は悪くはない、と思う。
「わっしが無視してるのに名無しが無理矢理話しかけてくるんでしょうが」
「そうだっけ?そんなこと言って本当は嫌じゃないくせに!」
「その頭ぶち抜いてやりたいぐらい嫌だよォ〜」
気の抜けたような声で言うボルサリーノは言葉とは裏腹にとてもいい笑顔をしていた。
嫌よ嫌よも好きのうち?
「照れ屋さんめ。とりあえず茶菓子を熱望」
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