一日ぶりに会った同期は、討伐帰りの名無しを案外冷めた目で見ていた。
気持ちの半分以上は何故一日で名無しがこんなにズタボロになったのかがよくわからない、といったところだろう。それはそうだ。自分でもよくわからない。
「……今なんつった?」
「いや、だからなんか知らんけどクザンの下に付くことになった」
意味がわからないと言わんばかりに眉間にシワを寄せたヘルメッポは、コビーと顔を見合わせてから首を傾げた。同じようにコビーも首を傾げる。
「え?討伐に行ってたんですか?なんの前触れもなく?」
「気が付いたら海の上で、まぁ普通に火拳しててそしたらダルメシアンがぽいぽいしてさ」
「おいおい人間の言葉を喋れよ。全く理解できねぇぞ」
困惑してクエスチョンを飛ばしまくるコビーと、わからなすぎて半ギレ状態のヘルメッポ。
名無し的にはこれまでにないぐらい誠心誠意を尽くして喋っているつもりだが、1割伝わっているかいないかぐらいだろう。
もう言葉が出尽くしたため、なにも出てこない。
「まぁ、まぁまぁつまりそう言うことだ!うん!」
「全然わかんねぇよ!」
一応頑張って言葉を絞り出そうとしたが、無意味に手が動いただけで特に何も出てこずに自己完結することにした。
どうせ説明したところでヘルメッポの頭では理解できないに違いない。
「ろくに説明も出来ないやつが言うんじゃねぇよ!」
「ねえ、もしかしてケツ顎は今なんか胸の奥がもやもやしてない?なんかこうもやもやって!」
「ああ、してるよ!お前のせいでな!絶対的にお前のせいで!」
小馬鹿にするような名無しの言葉に、ヘルメッポの眉間に一気にシワが寄って奇妙なサングラス越しにも怒っているのがわかるぐらい顔が歪む。
「それは、所謂ストレスと言うものです」
ポンポンとヘルメッポの肩を叩きながらへらへらと名無しが笑うと、ヘルメッポの後頭部辺りからブチッと何かがちぎれるような音が聞こえた。
「うぜぇ!わかりきったことどや顔で言ってんじゃねぇよカス!」
「どやっ!」
豆知識らんらんらん
「因みに片方の鼻だけで息を吸うとストレス解消になります」
「お前が喋らなければ俺のストレスは溜まらねぇよ」
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