「私の可愛い黒骸ちゃん…なんでそんなに美人なんだ!」
「名無しちゃんはなんでそんなに暢気なの?」
手に入れていたばかりの刀を鞘から引き抜いた名無しはキラキラと目を輝かせながら峰を指で撫でた。
「てかさ、そもそも海賊狩りしてたぐらいで海軍に引っ張ろうとするのがお門違いなんだよね」
艶めく刃を見つめながらちらっとクザンの方を見ると、クザンはうんざりしたような顔ででかい机に腰掛けた。
そもそも海賊狩りはしてたが海軍狩りもしていた。そんなこと海軍のお偉いさんの前では絶対に言えないけれども。
「あらら、名無しちゃんって海軍も狩ってたの?そいつはいけねぇなぁ」
「おっといけない!ついつい心のドアを閉め忘れちゃったぜ!」
布で峰を支えながら光に当てて様々な角度から眺めた名無しは、ふんふんと頷いてから刀を鞘に戻した。
正直刀さえ手に入ればあとはどうでもいい。
「ところで名無しちゃん、そこ俺の席なんだけど」
「腹減った…」
「名無しちゃん、聞いてる?」
「うん。聞いてるよ。聞いた上で腹減った」
バシバシと机を叩いて腹減ったと繰り返す名無しに、クザンからはため息しか漏れない。
本当にお腹が減っているので他のことが考えられない。
そういえばまともにご飯を食べたのはいつだったか、昨日はとかげっぽいものを焼いて食べた。
「名無しちゃん…そんなに食べ物に困ってたの?」
「世の中まともに食ってるやつの方が少ないって」
「えっ?野性的に生きてる女の子って多いの?」
「知らんがな」
「名無しちゃんが言ったのに」
ぐきゅぅぅ、と腹の虫が切なく鳴き声を上げて、名無しは書類だらけの机に突っ伏した。
エネルギー切れ
「あららら、ご飯食べに行く?」
「奢りなら行ってやってもいい…」
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