「どんなもんですか」
進行方向をぼんやりと眺めていたクザンは、背後から聞こえた声にあー…と情けない声を上げた。
「まぁ、ありじゃないの?戦闘自体は慣れてるし戦力としては使えるし」
「問題は素行と思想の話だが」
意図的に反らされたであろう話題にわざとらしく咳を挟み、修正したダルメシアンは背筋を伸ばしながらもどこか俯き気味に見えた。
初っぱなから問題児だった名無しは、サカズキやらセンゴクから目の敵にされており、そのせいで上司であるダルメシアンが猛攻を受けている。
ダルメシアン自体は名無しを毛嫌いしているわけではなく、手に余る状態でどうしたらいいのかわからないらしい。
それでクザンに見定め役が回ってきたのだ。どういうわけか、センゴクは面倒事を押し付けてくる。
買われているのか、それともサカズキの思想を憂いているのかわからないが。
「俺はサカズキとかとは違ってあんな破天荒な子がいた方がいいと思うけど」
面倒そうに頭を掻いたクザンの後ろでダルメシアンがため息を吐いた。
ダルメシアンも似たようなことを思ってはいるはずだ。一度部下にした人間を簡単に見放すようなタイプではない。
「…まぁ、中将が言いたいことはなんとなくわかるんだけど」
「なら大将の口から言ってもらえると助かりますが」
凄く、と強調してくっ付けたダルメシアンは俯き気味だった顔を上げてまた一つ咳を溢した。
まだなにも了承はしていなかったつもりだが、どうやらそれはダルメシアンの耳には届きそうにない。
「しゃあねぇなぁ…なら俺が一時身柄を預かるってことで」
「助かります」
半分やけくそでそう呟くと、後ろでダルメシアンが間髪入れずに返事をして短く息を吐くのを感じた。
どこからどこまでがセンゴクの想定していたことなのかはわからないが、少なくともこの結果に笑うのはセンゴクとダルメシアンぐらいのものだろう。
煮ても食えぬは天下の知将
「なーんか納得いかねぇんだよなぁ…センゴクさんに踊らされてる感じが」
「諦めた方が身のためだ」
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