ポートガス・D・エース。
悪魔の実であるメラメラの実を食べた炎人間。
その名前が海軍に届いたときには既に手遅れな程有名になっており、慌てて王下七武海に勧誘してきた海軍に脇目も振らず、四皇の内の一人、エドワード・ニューゲート。通称白ひげの家族になってしまったというなにかと世間をお騒がせの男らしい。
「あー…なんかエースって聞いたことあると思ったんだよね!わかるわかる、なんか思い出した!資料で見たことある」
目の前にいたエースを見ながら名無しは一人で頷いた。
どこかで見たような気がしていたのは、手配書で遊んでいたときに見たことがあったからだ。
今まで思い出さなかったのは決して職務怠慢などではなく、ただ単に顔を覚えるのが苦手だからだ。
「白ひげ海賊団の2番隊の隊長でしょ?なんか凄いらしいじゃん!」
「は?ま、まぁな!」
記録によると背中には大きな彫り物があるらしい。
今日はシャツを着ているせいで一番目立つ特徴が隠れているらしく、気がつかなかったのはそのせいだったと言うことにしておこう。
「海賊ならそっち行かない方がいいんじゃない?今日はそっちには死神がいるから」
「は?どういう意味だ?」
「え?なにが?」
ずかずかと歩いていくエースが、名無しの言葉に足を止めて訝しげに顔をしかめた。
その顔を見た名無しは気まずそうに目を反らしながら耳に小指を突っ込んでホジホジとこそぐ。
「変なやつ」
あからさまに不自然な動きを怪しみながらもまた歩き始めるエースの腕を名無しが掴んで、ブンブンと首を振る。
「あいやいやああ海あわわわーっ軍がぁぁあああ、明日は晴れるといいねえええ」
教えてやりたいような捕まえちゃって手柄を立てたいような複雑な気持ちが入り交じってもう自分でもよくわからない。
とりあえず目の前のエースが関わってはいけないやつリストに入れようとしていることだけは何となく理解できた。
「…女にこんなこと言うのもあれだけど、お前なんか気持ち悪いな」
「私は海軍です。てめぇを捕まえることにしました。覚悟しやがれってんだこの野郎」
手を上げろ!
「え?お前海軍なの?海賊かと思った」
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