うちの大将



「あららら。名無しちゃん凄いボロボロだね」


船についたときにはすでに辺りは暗くなっており、誰の血だか分からない黒ずんだ血が白い制服に染み込んでいて、連行した海賊と区別がつかないほど汚くなってきた。
それもそのはず、連行しようとしたのはよかったが左腕が健在だった海賊がそう易々と連行される筈もなく結局ステゴロになってしまった。

散々殴り合って、しまいには傷を更に抉るという卑怯な手に出てやっと連行することが出来たわけだが、正直お互いにボロボロになりすぎてどうでもよくなってしまったというのもある。


「1200万ベリー。まぁ新人にしちゃあ上出来なんじゃないの」

「上から目線で言うんじゃない!お使いご苦労様扱いじゃん!」

「あららら。これでも俺は名無しちゃんよりずっと上なんだけど」



海賊をじろりと睨み付けたクザンは名無しの埃だらけの頭をぽんぽんと軽く撫でた。
海賊は番号みたいな識別を付けられて軍艦の中に連行されていく。
何やら捨て台詞を吐いていたが、疲れすぎて聞いてあげるだけの優しさはなかった。


クザンの手を思いきり払うと、痛めた手首がずきりと痛んで思わず顔をしかめた。
右手首は痛むし左拳はステゴロで裂けるし、これで500ベリーだなんて割に合わなすぎる。


「痛めたの?最初はよくやるよね」


たいして興味無さそうに名無しの腕を掴んだクザンはいかにも気持ちがわかるみたいに頷くが、その無関心そうな顔が全てを台無しにしているとは気がついていないだろう。


「これでも一応心配してるんだけどね」

「一応ってところに全てが詰まってる感じだよね」


ひんやりとしたクザンの手のひらから違和感が広がり、白い湯気のようなものが漏れ出す。
追い討ちをかけるようにピキピキと嫌な音が聞こえてきて、名無しの顔がひきつった。


「ちょっ、手が凍ってるがな!!」

「冷やした方がいいと思って」

「冷やすってか凍傷になって腐ったらどうしてくれんの!?馬鹿じゃないの!?馬鹿じゃないの!?」


凍りかけた手をブンブンと振ると、氷の欠片がぽろぽろと手首の辺りから落ちていった。
凍っているせいか、手首の痛みはあまりないが驚きの方が大きくてそれどころじゃない。


「なんで二回言ったの?」

「その悪びれのない顔が私にそうさせたんだよ。なぜわからない?」











うちの大将


「名無しちゃん短気だね」

「てめぇは鈍感デスネ!」




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