必死に瀕死



海賊に食い尽くされそうになっているその島では、手配書なんて必要ないぐらい海賊だらけだ。
町を食い尽くした挙げ句、海賊同士で共食いまでしているらしい。


「よし、お前等海賊だな!全員捕まえる!」


寂れた酒屋に勢いよく飛び込んだ名無しだったが、中で寛いでいた海賊達は特別慌てることもなく、飛び込んできた名無しを冷めた目で見ていた。


「…こんにちは、皆さんの天敵海軍です」


あまりにも冷めた目で見られているので堪えきれずに自己紹介してみたが、相変わらず場は冷えきっている。
それどころか名無しの存在を無視して話を始める奴すらいた。

海軍と癒着している海賊の反応そのものだ。


本来水と油なずなのに、全く動じることもなく寧ろ仲間のような反応だ。


「……」


テーブルを叩いてみたりしたが、相変わらず反応がなかったので一番近くにいた柄の悪そうな男の手首を掴んでそのまま捻り上げた。


「いてぇっ!てめぇ何しやがる!!」

「こんにちはーっ!皆さんの天敵の海軍です!」


痛さのあまりに前のめりに倒れる海賊をテーブルに押さえ込んだ名無しに、漸く海賊達の目付きが変わった。
がたがたと立ち上がる屈強そうな男達を目の前に名無しはごくりと固唾を飲み込む。


挑発したのはいいが作戦なんてなにもないし、大人数を相手にできるほどの実力も持ち合わせていない。それなのに挑発したのはただ単にスルーされてムカついたからだ。

自分でも馬鹿な行動だとは思うのだが、これはもう性分なので仕方がない。
毎回これで痛すぎるぐらい痛い目にあっている。


血走った目でゴキゴキと健康そうな骨を鳴らす海賊を目の前にした名無しは押さえ込んでいた海賊から手を離して、ポケットに突っ込んだ手配書に目を通した。

ざっと見たところ賞金額が500万から1000万レベルがごろごろいる。


「今更なんだけど一人ずつじゃダメ?」


誰だ。一人倒したら500ベリーなんて割りに合わないことを言ったのは。


「喧嘩売っといてごちゃごちゃうるせぇんだよ、このブス!」

「はっ!?ブスって言うな!不細工のくせに!!」


とりあえず次にもじゃ男に会ったら両鼻に指を突っ込む。次にもし会えたら。












必死に瀕死


「トーナメントとかどう?」





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