頭に衝撃が走って慌てて飛び起きたら物凄い形相のサカズキが目の前に立って名無しを見下ろしていた。
逆光のせいか表情ははっきりは見えないが、空気からして今にも爆発しそうなぐらいキレているのはわかる。
そんなサカズキを目の前にしているのに起き上がる気になれないと言うのはある意味凄いことだと自分でも思う。
でも今にも瞼がくっついてしまうのは自分でも止めようがないのはわかって欲しい。サカズキ暑苦しいしウザいからバスターコールが発令されたらいい。
「貴様どれだけ不謹慎なことを言うちょるかわかっとるんか」
「は、はぁ…成る程、感慨深いです」
寝ている名無しの襟首を掴んだサカズキがドスの効いた声で迫るが、正直眠たすぎて低い声ですら子守唄にしか聞こえない。
ぶっちゃけサカズキに全く興味がないからかもしれないが、ちょっと遊んだぐらいでそこまで怒れるのもどうなんだろうと思う。
「貴様がいると士気が下がるっちゅうことがわからんのか!他の新兵を巻き添えにするのはやめんかい!」
「……眠いのでまた明日聞きたいと思うんだけど」
一人で白熱していることに関してはなにも言わないが、目の前でギャーギャー騒ぎ立てるのは本当に勘弁して欲しい。
「クビでもいいから今は寝かせてよ…」
怒りで震えるサカズキの手から伝わる振動も今は心地がいいだけ。ここまで眠いともうなにも怖くない。
落ちていく感覚に身体を委ねる名無しの耳はサカズキの怒鳴り声をシャットアウトしてしまった。自分でいうのもなんだが、かなり高性能な耳だ。
大将すらもシャットアウト!
「こ、の…っど阿呆うがっ!!」
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