「サカズキに反抗したじゃと?ぶわっははは!」
「いや笑い事じゃないでしょうよ。センゴクさんもカンカンだし」
ゲラゲラと笑いながら煎餅を噛み締めるガープにクザンはため息混じりに肩を竦めて見せた。
サカズキの意見に逆らって派手に殴られた名無しの話は電光石火の如く本部に知れ渡った。
サカズキからセンゴクに苦情が行き、センゴクからダルメシアンに注意が行き、ダルメシアンがガープに愚痴を漏らしているところだ。
たまたまガープに呼び出されて説教されていたところにダルメシアンがぐったりして入ってきたのだ。
「全く…よりによって大将赤犬に逆らうなんて命知らずもいいところだぞ」
額を覆うように手を添えたダルメシアンは重々しいため息を吐いて、出されたお茶をゆっくりと啜る。
サカズキの極端な意見に反発する人間は少なくはない。でもそれはあくまでも水面下であり、海軍のトップに面と向かっていく人間はただの考えなしだ。
「なんか処分あったの?」
「今回のところは厳重注意ですんだが、次似たような事があれば処分は免れんだろうな」
「次があり得そうだからこわいよね、あの子」
「恐ろしいことをさらっと言うな」
クザンの言葉にダルメシアンはますます肩を落とした。
他の中将は名無しが自分の下にいなくてよかったと内心ほっとしていることだろう。
名無しは最初から中将クラスには懸念を示されており、ガープ以外は受け入れを拒否していた。だが、ガープは破天荒な人間を伸び伸びと育ててしまうということでセンゴクが却下し、ジャンケンで負けたダルメシアンの下につけることになった。
「まぁ正義なんて色んな形があるんだから一色に染めることが正しいことじゃねぇと俺は思うけどね」
クザンがぽつりと溢すと、ガープが同意するように軽く頷いて見せた。
「名無しの場合はなんの実績もない新兵だからそういう問題にすら至ってはない」
軽く擁護するようなクザンとガープに釘を刺すようにダルメシアンが口を開く。
二人はお互いの顔を見合わせてから確かに、と残念そうに呟いた。
正義の定義
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