困ったちゃん運送屋


渋い、と言うべきなのか。それとも厳ついと言うべきなのか。
あんまり目を合わせたらいけない感じの人だと言うことはなんとなく理解した。


「なんでわしがそいつの面倒を見らんといかんのじゃ」


目を合わせなくてもわかるぐらい、目の前にいる厳ついおじさんは名無しの方を睨み付けている。
なんていうか、空気が痛いなんてレベルじゃない。


「そんなこと俺に言わないでよ。センゴクさん命令なんだから」

「あの人もようわからんこと…とにかくわしの下に女はいらん。お前が面倒見んかい、青雉」


青雉と呼ばれたクザンは、勘弁してよ、と小さく漏らして高い位置から名無しを見下した。
青雉だったりクザンだったり、もう面倒だからもじゃ男で統一したらいいと思う。
赤犬は赤犬でハンバーグみたいな顔してるし、人間ビックリショーでも目指しているのだろうか。


「……」

「名無しちゃん、ハンバーグはダメでしょ」


黙り込んだ赤犬の方を見ると、眉間にこれでもかと言わんばかりにシワが寄っていて、目が合った瞬間グーで殴られた。


「いっ…!」


本当に避ける暇も一切与えずに繰り出された拳骨には、痛さよりも驚きの方が強く出た。
もちろん痛かったのは痛かった。


「あららら」


隣で人が殴られたと言うのに暢気な声を出すクザンにも殺意が沸きそうになる。
八つ当たりかと言われれば全力で頷こう。


「わしの下に置きたいのなら口の聞き方ぐらいは覚えてから来させろ」


名無しを睨み付けながら偉そうに口を開く赤犬に、流石に怒りの限界を超えた。


「別に置いて貰わなくて結構だよ、このハンバーグ野郎!」

「もう一回言ってみろ、このクソ餓鬼が」

「言われなくても何回でも言ってやんよ!」


中指をびしっと立てた名無しに、赤犬が鼻で笑う。
掴みかかろうとする名無しの首根っこをクザンが易々と掴み上げて、名無しはぶらぶらと情けなく宙で揺れる。


「離せもじゃ男!こいつマジで一発殴らないと気が済まん!」

「本当…面倒くせぇなぁ…」


バタバタと宙に浮いた足を激しく揺らした名無しに、クザンはこの上ないくらい面倒そうにため息を吐きながらそのまま運送された。


















困ったちゃん運送屋


「ムキィーっ!離せもじゃ男!あのハンバーグ野郎けっちょんけっちょんにしてやるんだからーっ!」

「だからクザンだって言ってるでしょうが」



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