右向け、右!



海軍本部というのは広そうで案外狭い。
特に言いふらしたわけでもないのにミホークの弟子だとかパシリだとか噂が一気に広がり、見知らぬ海兵からもじろじろと見られるハメになってしまった。

そんな視線にイライラしていた時、たまたまサカズキに出くわしてしまって、今は絶賛ガン飛ばし祭中だ。
特に意味はないのだが、掃除をしているのにど真ん中を堂々と歩いてくるものだからムカついて道を塞いでやった。そしたら両者引かずににらみ合いをすることになってしまったというわけだ。


「下品だと思っておったが海賊の弟子なら納得じゃのォ」


暫く睨みあった後で上から威圧するようにわけのわからない嫌味を言われたが、とりあえず意味がわからなかったので眉をハの時に歪める。


「ああん?嫌味ならもっとストレートに言えや」

「嫌味も理解できんとは」

「上に立つやつの中にもその素質がないような奴がいるのと一緒じゃない?そうズッキーみたいにね!!」


なにを朝から苛々しているのか知らないが、今日は頗るご機嫌斜めらしく一歩も引かない。
本当に忌々しい男だ。


ボルサリーノもセンゴクもクザンも好きではないが、サカズキは嫌いだ。
ムカつくというのもあるが、なにが何でも海軍が正しいという思考が気にいらない。

どれだけ崇高な考えをお持ちなのか知らないが、自分が一番正しいと考えは誰だって持っていて当たり前だ。


「貴様、誰に口をきいているのかわかっちょるのか」


ギロリと上から睨み付けてくるサカズキは、今にも切れそうなほど血管を震わせて名無しの襟首を掴んだ。
怒りのあまり手が震えていて、まるで親の仇でも目の前にしているようにも見える。

足が床から浮き上がり、心なしか息も苦しくなってきたとき、サカズキの背後にコビーの姿を見つけた。
暫く固まっていたコビーはパクパクと口を開閉させたあと、一人でパニックを起こしてふらついていた。コビーの気の弱さも大概だ。


「わしが烏は白だと言うたら白になるんじゃァ!それがわからん下劣なヤツは本部から出ていかんかいっ!」

「馬鹿か!烏が白いわけねぇだろこの石頭!てめぇこそ図鑑見てこい!!」


正論を言ったら何故か思いっきり殴られた。このあと貧血気味のコビーに物理的な問題じゃないんだとたしなめられた。
ムカついたのでコビーにビンタをしておいた。









右向け、右!


「なんで殴られたんですか、僕」

「よくわからないことを言ったから夢かと思って」






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