ミホークが本部になにをしに来たのか、聞こうと思ったのだが割とどうでも良かったせいかご飯と一緒に飲み込んでしまった。
お腹がいっぱいになったらもはやミホークの存在自体どうでもよくなってきたのが現実だ。
はち切れそうなほどに膨らんだ腹を苦しそうに撫でる名無しと乱雑に積まれたお皿を交互にみたミホークは、無表情ながらもよく知った顔をしている。
これはあれだ、なんだこいつもう早く死んだらいいのに、という顔だ。ヘルメッポが極限にキレた時にいつもこんな顔をしている。
「目って口みたいにものを熱く語るって言うもんね!」
「言いたいことはわかるが全体的に間違っている」
「言ってることが分かればなんら問題はないじゃん!そんなんだから女ができないんじゃねこのムッツリす」
すけべ、と言いかけたが、ミホークが静かに黒刀に手をかけたので瞬時に口を閉じた。
言いきっていたら間違いなく頭と胴体がさよならしていただろう。
なにごともなかったかのように目を反らした名無しは、たまたま食堂を通りかかったクザンに視線を移す。どうせまた仕事がしたくなくて仕事を放り出して逃げ出してきたに違いない。しょうもない大将だ。
ダルメシアンやガープがクザンが仕事をしないとこの間散々怒っていた。
「あらら、名無しちゃんって鷹の目と仲良し?」
「仕事しろ」
「仕事しろ」
いいサボりの口実が出来たと言わんばかりに近づいてくるクザンに名無しとミホークはほぼ同時に口を開く。
今まで気が合うと思ったことはないが、今初めて気が合うこともあることを知った。
ダルそうに背中を丸めて名無しとミホークの顔を交互に見たクザンは、相変わらず自由な髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜて目を細めて見せる。
「まぁ、それは置いておいて名無しちゃんと鷹の目ってもしかして」
「付き合ってません!やめて!誤解だから!いくら私が可愛すぎるからってそれはないからっ!」
「……もしかして、親子?」
悲鳴に近い声をあげながら首をぶんぶんと大きく横に振る名無しに、クザンがぽつりと意味不明なことを呟いた。
眠りすぎて目まで腐ってしまったらしい。
ハーイ、ダディ
「地獄に堕ちろ、青雉」
「名無しちゃん辛辣だねぇ」
「ってミホちゃんが心で呟いてたのが聞こえた」
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