脳内脱走計画中



正直な話、海軍の規則というのは理不尽もいいところだと思う。
難しいの規則は読んでもわからなかったから知らないが、身体で覚えた規則の殆どは上司の機嫌ひとつで怒られると言うことだ。いや、よく考えたら規則自体読んだことがなかった。


「独り言はいいから手を動かせ、名無し」


不貞腐れたまま指にはさんだペンを揺らしていた名無しをダルメシアンが呆れ半分で睨み付けた。

ダルメシアンの目の前に特別に設置された反省文執筆用机は急遽名無しの為に設置されたものだ。
ガープに怒られている海兵を笑わしたことと、軍艦にタールで落書きしたことと、廊下にワックスを塗りまくって20人弱に軽傷を負わせてしまったことについての反省文を書けと言うのだが、何をどう反省すればいいのかが全くわからない。


「わんちゃん」

「誰がわんちゃんだ」

「ダルメシアンって犬がいるじゃん」

「ドーベルマンもいるだろう」

「ドーベルマンはどっちかと言うと導師って感じじゃない?なんかこう庶民臭がしねぇ!導いてる感じ!」


かつかつとペンの裏側で机で叩く名無しは、不機嫌を表すように唇を尖らせて上司であるダルメシアンを睨み返した。
反省文はと言うと、自慢じゃないが一行も進んでいない。


ダルメシアンも半分以上諦めているのか一行も進んでいない半分文についてはなにも言わない。

朝食の時にコビーから聞いたのだが、今日は何とか何とかと言う小難しいネーミングの集団が集まるらしく、余計なことをしないように拘束するために反省文なんて書かされているのだろうと思う。
じゃないとかれこれ3時間なにもしていないのに怒られないことが不自然だ。


「わんちゃん、私なにもしないよ?そんな盗み聞きしてやろうとか会議室に発煙筒投げ込んだりとかしないよ!?」

「その発想に至るところからして信用できん」


ここまで警戒されているとある意味押すな押すな現象と言えるだろう。かなり気になる。
こうなると意地でもその集団の面を拝んでやらないと気がすまなくなってきた。


「わんちゃん」

「却下」

「まだなにも言ってないよ…せめて最後まで聞いてから却下してよ」

「反省文を提出してからなら言い分を聞いてやろう。それまではお前の言い分は一切聞かん」


目を通していたファイルをばたんっと大袈裟に閉じたダルメシアンは短くため息を吐いた。

どうやら今日中の解放は見込めないようだ。









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