全力でお断りします


ざわざと騒がしい食堂は一般兵がこれでもかといわんばかりに犇めいている。

特別階級がない海兵は食堂を利用出来る時間が限られている。これといって決まりがないのだが、なんとなく暗黙の了解で早い時間にとることになっている。階級のある先輩方に快適にご飯を食べていただくためにだそうだが、正確にはいつからそうなったのか誰も知らないらしい。

本来なら2人しか座れないのに3人4人座るのは当たり前。
只でさえ茹だるような暑さなのに、詰め込まれた海兵のおかげで室温は外よりも高くなる。
汗でだらだらになりながら本日のオススメ激辛丼を食べるわけだ。

真夏の激辛丼なんてある意味拷問に近いと思う。
食べたくないとは思うが食べなければ訓練についていけないし、明日は所属の隊が決まる大切な日だ。
いつもよりも室温が高い気がする。

ヘルメッポが嫁ぎ先が決まる女の気分だ、と気持ちが悪い寝言を言っていたので思いきりビンタをして目を覚まさせてやった。


そんなことを思い出しながら激辛丼を食べ終わる頃には、足を何回踏まれたか忘れるぐらい踏まれ、意味のない肘鉄を何度もくらい、やるせない気持ちになりならがら食堂を後にすることになった。
コビーやヘルメッポは食べるのが遅いので未だにあの人の並みに飲まれ、汗の臭いを感じながら食事をしているのだろう。


「おい」


流れ出てくる汗を制服で拭いながら食べるのが早くてよかったとしみじみ感じ入っていると、不機嫌そうな声が聞こえて反射的に眉間にシワを寄せる。


「誰かと思ったらモクモクさん!どこのチンピラが喧嘩売ってんのかと思っちゃったよ!」


振り返った視線の先にスモーカーのスモーカーを見つけて、無意識に寄っていた眉間のシワを揉みほぐすように押さえた。


「本部にチンピラがいて堪るか」

「見た目だけなら負けてないよモクモクさん」

「その減らず口、頑丈そうな前歯と一緒に砕いてやろうか」

「嘘だよ、冗談だよ、冗談の冗談…ぶべっ」


ぐへへ、と下品に笑って見せた名無しの顔にスモーカーからの拳がめり込んだ。
気のせいか顔のパーツが真ん中に寄ってしまったしまったような気がした。


「あまりにも酷いこの仕打ち!私がなにしたっての!鼻血でた!」

「てめぇが余計なこと言うからだろ。死んで反省しろ」


ちょっとからかって笑って憂さ晴らしをしたからといってあまりにも酷いスモーカーの仕打ちに、名無しは心の復讐ノートにスモーカーの名前を書き足すことにした。
恨むようにスモーカーを睨み付けていた名無しはずずっと鼻をすする。鉄の味が口の中にまで広がってテンションが落ちた。


「あー…そうだ。てめぇのせいで本題忘れるところだったじゃねぇか」

「ちょっと横暴すぎじゃないか。殴られた上に責任転嫁なんて笑えねぇぞこんにゃろ」

「うちの隊に来るか?」

「なんで?ちょっと意味がわからない」


突拍子もなく吐き出された言葉に名無しはいっぱいになったお腹を擦りながら首を大袈裟なぐらい傾げた。





















全力でお断りします


「スモーカーの下で働くなんて社畜まっしぐらじゃん!」

「前言撤回だ。やっぱりてめぇはいらねぇ」






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